差別のない社会へ人権啓発メッセージ:性同一性障がいのある人々に対する差別・偏見を無くそう
シリーズ @じんけん Vol.392

知ってください、私たちのこと

~性同一性障がいのある人の人権について考える~
問い合わせ先 本庁舎人権推進課 電話0857-20-3143

世の中には「男性」と「女性」しかいないと、長い間非常に固定的に考えられてきました。しかし、体の性と心の性との食い違いに悩みながら、周囲の心ない好奇の目にさらされて苦しんでいる人々がいます。今回は、ヒューマンライツセミナー〈(公財)鳥取市人権情報センター 主催〉で、当事者の前田良(まえたりょう)さん(GID (性同一性障がい) 家族の会)にお話しいただいた内容から、性同一性障がいについて考えます。

前田さんの講演から

性同一性障がいとは

僕は31歳、女性としてこの世に生まれてきました。そして、性同一性障がい者として生きています。

性同一性障がいとは、生物学的な性(体の性)と性の自己意識(心の性)が一致しないため、社会生活に支障がある状態をいいます。

よく混同されてしまいますが、性同一性障がいと同性愛は違います。「自分を女性と思うか男性と思うか」という性自認の問題と、「女性、男性のどちらを性の対象として好むか」という性的指向の問題は違うということも、ぜひ知っておいてください。

心と体の不一致に悩む

僕自身が自分の性について初めて違和感を覚えたのは、幼稚園の時です。男の子はこっち、女の子はこっちと分けられたり、男の子はこんな服、女の子はこんな遊びというふうに決められることを何かおかしいと思いました。

小学校の高学年くらいになると、胸がふくらんできたり、生理が始まったりと、男の子たちと違う体の形になっていきました。それまでは男の子とばかり遊んでいましたが、女の子としか遊ばなくなりました。女の子と一緒にいると、自分が男に見えるのがうれしかったからです。

中学生、高校生のときは、「嫌だな」と思いながらも制服のスカートをはいていました。「人と違う自分は、恥ずかしい存在なのか」と悩み、ずっともやもやした思いを心の中に抑え込んでいました。ドラマ「三年B組金八先生」で性同一性障がいというものを初めて知り、自分がそうなんだと気づきました。でも、わかったというだけで現実は何も変わりませんでした。

周りの決めつけが苦痛に

その後、大阪で性同一性障がいの人と出会い、「悩んでいても始まらない」と、体を本来の男性の姿に戻そうと決心しました。両親に言ったとき、母は泣き出し、父には「お母さんを泣かせるようなことはするな」と言われましたが、最終的に「元気で生きていてくれるなら、それでいい」と認めてくれました。

性同一性障がい者は、さまざまな場面において「心の性」とは違う振る舞いや服装を要求されたときに苦痛を感じ、それになじまないでいることでいじめを受けることもあります。トイレなど、生活上で男女分けが必要な場所を使用するときは、かなり神経を使わなければなりません。また、あらゆる書類、身分証明書には性別欄がありますが、心の性とは異なる性別を書くことに苦痛を感じたりします。

大切なのは声を上げること

性同一性障がい者対する差別・偏見をなくしていくために何が大切なのか。それは当事者の声だと思います。当事者が先頭に立って問題に向き合っていかないと、関係ないと思っている人には何も伝わりません。いつも僕の隣にいてくれる妻でも、「わかりたいし、そのための努力も惜しまないけど、それでも一生理解できないと思う」と言います。だからこそ、伝えていかなければならないと思うし、これからも伝え続けていきたいと思います。

講演を受けて

人間を単純に男性と女性に分け、それだけを認めてそれ以外を排除してしまう考え方は、これにあてはまらない人々が人知れず苦しむ背景となっています。性同一性障がいについて知り、違いを認め、それぞれの人の生き方を尊重することが求められます。

※詳しくは「架橋(かけはし)」二九号(鳥取市人権情報センター発行・300円)に掲載されています。 電話0857-24-3125