写真:大堤うぐい突き保存会のみなさん

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元気です 139

宝の池、いつまでも
大堤うぐい突き保存会

全国から注目!伝統漁

毎年秋、気高町睦逢(むつお)の大堤池で行われる「うぐい突き漁」。その歴史は古く400年以上前にさかのぼる。江戸時代初め、鹿野城主・亀井茲矩(かめいこれのり)が朱印船貿易を行った際に学んできたといわれ、今でもタイなど東南アジアで行われているが、国内では珍しい。

大堤池は戦国時代、農業用のため池として造られた。現在も周囲の水田に水を供給している。稲刈りが終わると、池の水を抜き底にたまった泥やごみを流す。この水抜きの時に行うのがうぐい突き漁である。漁の主役は「うぐい」と呼ばれる漁具。細く割った竹を編んだ底のない籠のようなもので、直径は上が40センチで下が70センチ、高さは70センチほどある。このうぐいを、池に突き立ててコイやフナなどの魚を追い込み、中に入った魚を手づかみで捕獲する。この漁によって池の底に堆積している土砂をかき混ぜて水と一緒に流し、池の貯水量を保とうという先人の知恵だ。

この伝統漁法を後世に伝えようと、平成6年「大堤うぐい突き保存会」が結成された。地元、逢坂地区の10数人がメンバーだ。

保存会の谷尾賴孜(たにおよりあつ) 会長(72)は「大堤池は田を潤す大切なため池。この池を守るうえでもうぐい突き漁の伝統は消してはいけない。我々はその責任がある」と強く語る。

そんな中、今年3月、うぐい突き漁が全国から一躍注目されることになった。千葉県の国立歴史民俗博物館に、うぐい突き漁が常設展示されたのだ。全国の貴重な民俗資料を集めたコーナーに漁の写真パネルや漁具うぐいの展示、漁の様子の映像コーナーが設けられた。

保存会事務局長の谷尾幹夫(たにおみきお)さん(44)は「保存会結成20年。これまでの集大成と感じている。大変誇らしいこと、非常に嬉しい」と感慨深げに話す。

漁で池の大掃除!

写真:漁のようすうぐいを勢いよく池の中に突き刺す 写真:うぐい作りうぐいは米俵を編む台で作る 幸山さん

毎年10月初旬、うぐい突き漁は行われる。水抜き開始のあと、うぐいを手に池に入り、およそ2時間、ひたすら池の底を突く。うぐいに入った魚は勢いよく暴れる。「魚が入った時の振動が快感です。やった!!という気持ちになる」とメンバーの石田潔美(いしだきよみ)さん(75)。「魚の動きを考えてうぐいを突く。その駆け引きが面白い」とにこやかに話すのは、保存会で最高齢の久野弘敏(くのひろとし)さん(91)。久野さんは10年前まで漁に参加していた。うぐい作りのベテランで、竹などの材料さえ揃えば1日で作りあげる。保存会のみなさんは毎年この漁の前は、うぐいの修理と3~5個の新品のうぐい作りに忙しい。

メンバーの幸山幸夫(こうやまゆきお)さん(77)は「上手に作ってあげんといけんという気持ちで作っている。多くの人に漁を楽しんでもらいたい」と話す。

漁の当日は、体験者用にうぐいを30個ほど用意して貸し出す。大人も子どもも泥だらけになりながら楽しんでいる。数年前からは、漁が難しく魚が捕れない子どもにも楽しんでもらおうと「宝探し」を実施。池の中にある色付きの小石を探すというものだ。事務局長の谷尾さんは、「このうぐい突き漁は底に溜まった泥を流して掃除することも目的の1つ。子どもたちに走り回ってもらい池をかき混ぜてほしい」と話す。漁のあとはコイと地元野菜たっぷりの「うぐい鍋」が振舞われる。

メンバーは漁について「網で獲るのとは違う楽しさがある。だからやめられない。全く獲れない時もあれば、沢山獲れる時もある。難しくて面白い」「へとへとに疲れるが、この漁が好き」とみんな笑顔。

大堤池に愛着を

今年結成20年の節目を迎えた大堤うぐい突き保存会。今、世代交代の時期を迎えている。うぐいを作れる人も減り、今後はうぐい作りの講習会を開くなどして若手の参加に力を入れる予定だ。事務局長の谷尾さんは、「伝統を守りながらも何か新しいことをしていかなければと思う。若者にも参加してもらいたい。子どもたちにも呼びかけている」と前向き。毎年春、池にコイやフナの稚魚を放流しているのは、地元の逢坂小学校の児童。今年は、さらに池の環境にも関心を持ってもらいたいと堤に芝桜を植える手伝いをお願いした。

また、放流している稚魚が鵜による被害でここ数年、捕獲量が減ってきているのを食い止めようと、鵜飼いで有名な山口県岩国市・錦帯橋の鵜匠を訪ね対策を練るなど、保存会メンバーの漁への想いは熱い。事務局長の谷尾さんは、「きれいになった大堤池が、うぐい突き漁の伝統とともに地元に愛される憩いの場になってほしい」と話す。

10月6日、今年もうぐい突き漁が行われる。