特集
生姜(しょうが)のふる里を次世代につなげ

――鳥取市気高町日光集落。400年前から受け継がれる生姜づくりで地域活性化!!

気高町日光
鳥取日光生姜
鳥取日光生姜

むらおこしに一粒の光

気高町日光は、四方を山と海に囲まれた美しい小さな集落です。鹿野城主・亀井玆矩(かめいこれのり)が入り江だったこの土地を干拓し、水田開発を行った歴史を持っています。地盤が低く、冬場は水田が池のように変わり、そこにたくさんのコハクチョウがやってきます。毎年、その光景をカメラに収めようとたくさんの人が訪れます。

この地域の特色は生姜づくり。亀井公が朱印船貿易で東南アジアから生姜を持ち帰り、日光で栽培したのが始まりと言われ、400年以上の歴史を持っています。

しかし、近年は高齢化が進み、後継者不足や農機具の維持購入費の不安も重なり、農業が続けられなくなる家が出てきました。一昔(ひとむかし)前までは家々が競うように作っていた生姜も、その生産量は大きく減少。「このままでは伝統の生姜づくりが失われてしまうのではないか」という危機感がありました。

日光農産事務所
農事組合法人日光農産の事務所
山花繁夫さん
代表理事の山花繁夫さん

平成22年4月、本市は集落実態調査を実施。その中で「集落をもう一度活性化したい」「日光には伝統の生姜づくりがある」といった回答が数多くありました。これを受け、「生姜づくりをもう一度活性化したい」という思いをもった4人の有志が平成23年3月に『日光生姜生産組合』を設立。そして、取り組みを集落全体に広げ、平成23年12月に日光集落の水田地権者34人によって『農事組合法人日光農産』を立ち上げました。代表理事の山花繁夫(やまはなしげお)さんは「生姜づくりをきっかけに日光を元気にしたい」と語ります。日光農産は、生姜の生産・販売事業のほか、集落の住民が共同で農作物を生産する『集落営農』という方法で、米、ネギ、大豆を生産しています。

日光集落遠景
コハクチョウ
日光集落の遠景。冬が訪れると田んぼに水が張り、そこにコハクチョウが飛来する
生姜の植え付け準備
生姜植え付けのため、種となる生姜を準備する集落のみなさん
草取り作業
生姜の草取り作業。この日は、湖陵高校の生徒が日光生姜を研究するためにほ場を訪れ、作業を手伝った
2012年の生姜収穫祭
2012年の生姜収穫祭で、子どもが日光の人たちに教わりながら生姜を引き抜く
女性会のみなさん
お客さまに振る舞う生姜料理を作る、集落の女性のみなさん

家庭での生姜の保存方法

生姜
  • ラップで包み、暗いところに保存
  • 濡らした新聞紙で包み、暗いところに保存
  • すりおろして冷凍保存、または、そのまま冷凍したものを使用時にすりおろす
※低温、乾燥は厳禁!! (生姜は13℃以下になると腐食が始まると言われています)

虫と草との戦いの連続

収穫体験豚の生姜焼き
10月27日(日)に、生姜の収穫体験と料理教室を実施。市内の若者が豚の生姜焼きなどの料理を作り、交流を深めました

生姜は、体の免疫力を高め風邪を予防したり、冷え性を改善したりするなど、健康的な食材として近年注目されています。日光農産が手がける生姜は『鳥取日光生姜』と呼ばれ、小ぶりで香り・辛味が強いのが特徴です。鳥取県特別栽培農産物に生産登録されており、農薬や化学肥料を従来の半分に削減しています。

生姜の天敵は()と雑草。蛾の幼虫は、生姜の茎に入り込んで中を侵食するため、駆除が遅れると茎が折れたり腐ったりします。また、雑草を放っておくと生姜の成長を妨げ、収穫量が低下します。「使える農薬の量は限られているので使うタイミングが難しい」と副代表理事の谷口泰雄(たにぐちやすお)さんは語ります。また、除草剤は一切使用していないため、草取りにたくさんの労力が必要です。栽培期間中は集落のみなさんが時間を見つけてほ場に出向き、草取りを実施。「夏場の草取りが一番過酷です」と谷口さんは言います。早朝や夕方に作業を行うなど工夫をしながら生姜の成長を待ちます。

生姜は10月下旬から11月にかけて収穫が行われます。日光農産では、採れたての『(しん)生姜』でなく、『生姜(あな)』という洞窟で約150日間熟成させた『(かこい)生姜』を出荷しています。囲い生姜は、余分な水分が抜けて辛味とコクが増しており、県内外の飲食業者、菓子店などに愛用されています。また、大きく育ったものは翌年植えるための種として保管され、子孫を増やした後『(ふる)生姜』として出荷されます。

苦労乗り越え絆深まる

日光農産では、耕作が続けられない農地を農家から借上げ、米や生姜などの耕作面積を決めて栽培しています。また、機械がなかったり、人手が足りなかったりする農家の仕事も受託します。農作業はできるときにできる人が携わりますが、植え付けや収穫、出荷など、人手がたくさん必要な時に、必要な人数を集められないことがあります。また、日光農産の後継者となる人材も育てていかなければいけません。山花さんたちが抱える課題は山積みです。

平成24年11月、日光集落を活性化させることを目的に、『鳥取日光生姜大収穫祭』を実施。初めて集落の外から人を招き、収穫体験を通して生姜の魅力をPRしました。イベントでは、集落の若者が積極的に交通整理を引き受けたり、女性が中心となっておもてなしのための『生姜弁当』を制作したりと、幅広い年代の人たちが活躍。むらが動いた瞬間でした。

その後も気高町内外のイベントで、『生姜スープ』など生姜の風味をしっかり味わえる料理を出品。「おいしい」「あたたまる」と大好評で、徐々に『鳥取日光生姜』の知名度が上がってきました。

「一緒に仕事をすることで、ふるさと日光を守ろうという思いを持つ人が少しずつ増えている。それが自分の活力にもなる」と、谷口さんは言います。

こうした集落をあげたイベントを乗り越えてきたことで、生姜の草取りや収穫に携わる人が増え、一時期は約2町(約2万平方メートル)の耕作放棄地がありましたが、現在は全て解消しました。集落の半分の農地を日光農産が手がけるとともに、生姜の栽培面積を拡大することにも成功。今年は約50アールの面積に鳥取日光生姜を作付けし、約8トン収穫できました。

生姜づくりのメッカに

「自分とは一回り若い人たちが、積極的に農作業に出てくれるようになった」と谷口さん。鈴木学(すずきまなぶ)さんは、その中の一人。「集落を守り続けなければならない。家の農業を手伝いながら勉強し、それが日光農産に活かせればいいと思う」と語ります。

日光集落では、大量生産でなく、品質管理を徹底したこだわりの生姜を、集落をあげて作り続けます。「道路を歩けば生姜の香りが楽しめる。そんな昔の日光の風景を次世代に残したい」。これが山花さんたちの願いです。「日光を生姜づくりのメッカに」。大きな夢を抱いて、日光集落のむらづくりは続きます。

先人の知恵『生姜穴』

生姜は適度な温度と湿度の中で熟成させることにより、余分な水分が抜けコクと辛みが増します。日光集落では、先祖代々受け継がれる生姜穴で生姜を熟成させます。日光農産が使う生姜穴は集落最大のもので、奥行きが23メートルもあります。途中、アリの巣のように枝分かれした8つの横穴があり、それぞれの場所で新生姜、囲い生姜、種生姜を保管します。

砂を敷き、生姜を並べ、その上に砂をかける。これを繰り返し、生姜をミルフィーユ状に積み重ねます。この状態だと、気温15℃という生姜の保存に最適な状態が保たれ、1年中保存ができ、年間を通じて出荷ができます。

生姜穴 生姜穴の生姜
収穫した生姜を生姜穴へ運ぶ山花さん
鳥取日光生姜弁当 鳥取日光生姜弁当
生姜スープと生姜弁当を販売
2月24日、とりぎん文化会館で生姜スープと生姜弁当を販売。すぐに完売し、大きなPRになりました
生姜ご飯
生姜ご飯 材料(4人分)
うるち米200g
もち米100g
生姜50g
人参20g
だし昆布10㎝
A酒小さじ1
薄口醤油小さじ2
塩少々
水330㏄
<作り方>
  1. 米はといで、ざるに上げておく(30分程度)。
  2. 生姜、人参は千切りにする。
  3. 釜に1を入れ、生姜、人参を並べた後にAを加え、だし昆布を上に置いて炊く。
  4. 炊き上がったら昆布を取り出し、全体を混ぜる。
生姜の佃煮
生姜の佃煮 材料(作りやすい量)
生姜1kg
A三温糖250~300g
酒または水200㏄
濃口醤油60㏄
※三温糖はお好みで調節してください
<作り方>
  1. 生姜を薄く切り、1~2分煮た後、水気をきる。
  2. 鍋に1とA( 三温糖は3、4回に分けて加える)を入れ、中火で焦がさないように気を付けながら、汁気がなくなるまで煮詰める。

地域人の熱い願いを叶えたい!

宮本健さん
気高町総合支所
地域振興課
主任 宮本(みやもと) 健

私は一昨年前の春に気高支所にやってきました。日光生姜、瑞穂生姜と気高町は生姜づくりが盛んだということを知ったのは、恥ずかしながらそのときでした。日光のみなさんとお話をしているときに「作るだけじゃなく、行政も応援するので、もっと外にアピールしていこう」と提案させていただきました。

私自身、気高町の活性化のきっかけづくりに、生姜と温泉の活用を考えていました。なので、地域のみなさんの気持ちに火がついたことは市職員としてもとてもうれしいことでした。

昨年の冬から行っている『しょうがぽかぽかフェスタ』は、生姜風呂の温泉につかり、生姜鍋をはじめ、生姜づくしの料理を味わえる身も心も温まるイベントで、多くの方々から好評をいただきました。この成功は、地域のみなさんの元気や潤いにつながったと思います。

来年の2月にも盛大に開催する予定ですので、ぜひ、お越しください!