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元気です

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夏泊に活気を取り戻す
〜小型定置網漁業を活性化の起爆剤に〜

鳥取県漁業協同組合夏泊支所

写真:鳥取県漁業協同組合夏泊支所

市内初の定置網漁操業

鳥取県漁業協同組合夏泊支所で、今年4月23日、鳥取市内で初めての小型定置網漁業が始まりました。定置網漁とは、決まった場所に網を仕掛け、回遊する魚を網に追い込み水揚げする漁法。特別な技術を必要とせず、短時間で漁を行える点が特徴です。鳥取市の近隣では、浦富や御来屋地区で営まれています。  この漁を行うのは、夏泊支所運営委員長の遠藤通(えんどう とおる)さんをはじめ、夏泊地区出身の7人のみなさん。遠藤さん以外は、新たに漁師になりました。

夏泊地区は、青谷町東部の75世帯ほどの集落。現在、約30人が漁を行っていますが、「昔の半分以下になった」と遠藤さんは言います。

鳥取県漁業協同組合の調査で、夏泊の沖合が定置網漁業に適していることが分かり、遠藤さんは操業を打診されました。

写真:定置網漁の風景
定置網を引き上げると、大漁!

遠藤さんは「夏泊の活気のために」と一念発起。地区のみなさんに声をかけ、漁師になるようお願いをして回りました。漁師になった長田富士雄(ながた ふじお)さんは「声をかけてもらったことがうれしかった」と転職を決心。高木幹雄(たかき みきお)さんも「いつか船を買おうと思っていたので、夢が叶いました」と語ります。

その後、みなさんは御来屋地区で定置網漁業を勉強。乗船する「長尾丸」を御来屋の漁港から譲り受け、ついに操業が実現しました。「楽ではないが、楽しみがある」と、充実した日々を送っています。

大漁が実感できる漁法

長尾丸は、月に1度の休漁日と大しけの日以外、毎日漁を行っています。午前4時30分に出港。「昨日は全く魚が上がらなかったが、今日は入っていてほしい」。港を背にする乗組員たちの胸に、期待と不安が入り混じります。

漁場は、港から1kmほどの沖合に、長さ200m、幅50m、深さ22mの仕掛けが設置されています。漁場につくと、全員が持ち場につき、少しずつ網を引き上げ、魚を仕掛けの端まで追い込んでいきます。この際、全員の息が合わないと、仕掛けが壊れたり、魚を取り逃がしたりします。「同じ作業の繰り返しだが、危険もある」と遠藤さん。当初は、仕掛けを保つロープを切ってしまうこともありました。

作業が進むと、魚の影が見えてきます。「アジがよおけおる」「今日はアゴ(トビウオ)も入っとるぞ」。みなさんの大漁への期待が高まります。仕掛けの端までくると、いよいよ水揚げ。大きな網で魚をすくい、船上に引き上げます。「袋いっぱいの魚を見れるのが、この漁の醍醐味」。遠藤さんはうれしそうに語ります。

午前7時に帰港。地区の人たちが、今日の成果を一目見ようと長尾丸を出迎えています。「どうだった?」「今日はまあまあ!」といったやり取りが、朝のあいさつ代わり。この日はアジやトビウオ、チヌ、サワラなど、約350kgの水揚げがありました。「毎日このくらい取れるとありがたい」と遠藤さんは語ります。

写真:朝市の風景
穫れたての新鮮な魚が手に入る朝市も開催

仲間がいるから楽しい

毎月第1、3、5土曜日の午前10時から11時まで、夏泊漁港では朝市が行われ、長尾丸が水揚げしたばかりの魚を買うことができます。5月31日に行われた初めての朝市では30分ほどで完売したそうです。遠藤さんは、「地元の人に限らず、多くのみなさんに穫れたての魚を味わってほしい」とPRします。

写真:漁師飯
漁師飯も楽しみの1つ

漁を終えた後は、仲間と反省会を行うのが日課。遠藤さんは「定置網漁は、1人の漁と違い、仲間と一緒に声を掛け合いながらできることが魅力」と言います。高木さんも、「みんなとの作業は最高」と喜びを噛みしめます。

「定置網漁の取り組みを成功させ、活気のある夏泊を取り戻す」。長尾丸のみなさんは、大きな目標を胸に、仲間と苦楽を共にしながら、今日も海へ出港します。