天文セミナー 第209回

『星の風土記』



8.東方の国の物語1

 古代中国の考えに従って四方神について考えましょう、と言うのが今回のセミナー。

前回までは北方で玄武の守る国でした。あまり四方神についてはその方位を守って来ませんでしたが、今回の東方の神・蒼龍(青龍)についても同じように、あまりこだわらないで話を進めようと思います。

 東方の神は蒼龍、または青龍。この方向には以下のような星宿が当てられています。

東方宿(蒼龍そうりゅう・青龍せいりゅう) 春

  1.角  かく    おとめ座 

  2.亢 こう おとめ座 

  3.? てい   てんびん座 

  4.房  ぼう    さそり座 

  5.心  しん    さそり座 

  6.尾  び     さそり座 

  7.箕  き     いて座 



 これらの星宿を見ると、現在の春から夏の星座に相当しています。そして、この星宿が考えられた頃の季節を表すのは春です。この季節を表す表記から、この星宿が考えられた時代を推測する事ができますね。星宿で思い出すのは、高松塚古墳。この古墳の壁面に描かれた二十八宿は大きな話題になって、考古学だけではなく古代の天文学を研究している天文学者をも興奮させたものです。いわゆる古天文学で、天文学は考古学です。

 考古学者は、日本の文化のルーツは中国にあり朝鮮を経て渡来したと考えています。そして、この時に発見された古墳の内部に描かれた天文図と同じような二十八宿の絵が朝鮮の古墳にも残されていることに注目しました。研究者の中には、古代中国の文化が朝鮮を経て渡来したことは間違いないとしながらも、この古墳の被葬者が必ずしも当時の日本の貴人であったとは限らないとして、朝鮮から渡来して日本に天文を含む文化を持参した有力な人であったかも知れないという人もあります。この後で、さらに同じような天文図が描かれた古墳、キトラ古墳が発掘され研究されて古代中国を発祥とする古代文化が日本で研究され、国際会議なども開催されるようになりました。

 さて、この東方宿を見ると、ほとんどが黄道沿いの星座。他の星宿には黄道から飛び離れている星座が含まれていて、一寸不思議な感じがします。しかしこの東方宿はそうではありません。これは、きっと目立ちやすい星があるかないかによって決められているのではないだろうかと推測できます。星宿とは、実は月の有る場所を決める目安で、二十九日ほどで繰り返す満ち欠け、その月は一日ごとに星宿を一つ移動し、例えば今日ある宿に三日月が見えると三日前にはその三つ前の星宿に月が有って、その日が新月。つまり、初めて見えた月のいる星宿から遡って新月が決められるのです。この方法では、星宿を遡って新月を求めるので、遡ると言う意味の朔(さく)を新月の日に当てはめ、その前の日を晦(月籠り:つごもり)晦日(みそか)と呼んだのでした。季節は春。東方宿である蒼龍(青龍)が教える暦でした。

古代中国の刀を青竜刀と言いました。幅の広い大きな刀です。この刀の柄にこの青龍(蒼龍)の彫刻が施されていました。この刀は、切れ味よりも重量で相手を撃ち倒すことが重要視されたようです。


2014年11月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2014年11月の星空です

11月になりました。星空は夏〜秋〜冬と楽しむことができます。
西の空には夏の大三角が見えます。沈む時刻が早くなってきました
ので、早めに見ておきましょう。秋の四辺形は、頭の真上近くです。
秋の四辺形から、ペガスス座、アンドロメダ座とたどってみましょう。
北極星を見つける目印のカシオペヤ座も秋の星座です。東の空に
ある小さな星の集まりが「すばる」です。この辺りから冬の星空です。


次 回も、お楽しみに

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