天文セミナー 第204回

『星の風土記』



3.天の北国の物語1

 先ずは北の国から始めようかと思います。北の国は言わずもがな、極北と呼ばれ1年中寒風が吹き荒れ、人跡未踏の地として神々や精霊の住み処だと思われていました。

 この寒風の吹きすさぶ地の頭上に輝くのが北極星と呼ばれる北(子)の一つ星。北海道大学の寮歌に詠まれた「北極星を仰ぐ」地です。幕末も近くなり、この北海道にも当時北の蝦夷と呼ばれた人達が住んでいました。アイヌと呼ばれる人達です。この人達の頭上にも夜になると星達が輝いていました。

 この星達を頼りに、この蝦夷に足を踏み入れ開発の手立てを考えたのが、当時の勇気ある商人や、ある種の冒険家だったでしょう。今も残るこの人たちの足跡は、きっと北極星を見ながら雪の荒野を踏破したに違いない、と思われるのです。現在も残る当時の人達の足跡には、遠くカムチャッカ半島や、シベリアまでも足を伸ばした貴重な記録があります。

 天の北の国に住む家族。主人公は言うまでもなく北極星。中国の旧い考えでは、この北極星を主人としてこれを帝。その他の星達を、宮廷を取り巻く文武百官に見立て、さらに多くの星達がこの宮廷を守っていました。孔子の言葉を後日、弟子がまとめたのが「論語」、いわゆる「子曰く」で始まる有名な書物です。この思想によって、当時の中国の指導者達は国民を指導して行こうとしたのです。例えば、北極星の回りを廻る星は、北極星のもつ徳に引きつけられていて、その回りを絶えず巡っているのだ、と。もっとも、孔子は、今から約2500年昔の人。その時代の北極には北極星はありません。今では、こぐま座のβべーた星だとされていますが。

 この北極星はこぐま座の主星。長い尻尾を北極星というピンで地軸の延長線上の天球に留められ。24時間で、ピンの回りを振り回されます。振り回されるときの、遠心力で、尻尾が長くなったのかも知れませんね。こぐまがピンに留められているからには、その回りを心配して動き廻る母熊がいなくては話が進みません。おおぐま座ですね。この母と子の親子熊を、りゅう座の竜が狙っています。竜虎争う、と言う言葉がありますが、ここでは竜熊争うと言うことでしょうか。

 さて、古代中国の二十八宿の星達についてもお話ししなくてはなりません。よく見ると、黄道に沿っていて、やぎ、みずがめの星座があり、北へ飛び離れてペガスス座。どう言うことなのか判断に迷います。勝手な考えでは、やぎ、みずがめの星座には明るい星は少ないものの、割合に見つけやすい星があります。ところが、隣の星空には適当な星が見当たらなく、遂にペガスス座へと飛躍。

 仲間にしやすい星が選ばれたのかも知れませんね。


2014年6月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2014年6月の星空です

6月になりました。南の空やや西に見える赤い星が火星、
南の空やや東の明るい星が土星です。
火星の左には白く輝くおとめ座の一等星スピカがあります。
火星との色の違いを比べましょう。頭の真上近くには、
うしかい座の一等星アルクトゥルスが見えます。
アルクトゥルス・土星・火星と結ぶと三角になりますが、
春の大三角は、アルクトゥルス・スピカ・しし座の
二等星デネボラですので、お間違えなく。


次 回も、お楽しみに

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