天文セミナー 第188回

『星の歳時記』



20.すばる

 冬の夜空で目立つのは、すばるや、オリオン、大犬、小犬の冬の大三角を作る星達です。寒風が吹き抜けるとき、大きく瞬きながら地上を見つめ、自分を主張するようにも感じます。大陸からの高気圧が日本に張り出して来ると、日本海側では大雪、太平洋側ではカラカラに乾燥した風が吹きます。インフルエンザに注意しなくてはいけない季節。

 日本海側の多雪地帯でも、晴れ間があれば夜空には多くの星が瞬きます。雪に洗われた大気を通して見る星々の美しさには、一瞬寒さを忘れてしまうことがあるほどです。

 すばる。日本古来の言葉として親しまれて来ました。古事記などによると、アマテラス大神とスサノオ尊が高天原で誓いを立てた時、アマテラスが髪を纏めていた五百個の御統(みすまる)の珠・・・・、の統(すべる)、つまり纏めるという言葉が
ルーツだとされています。

  寒空に  統(すべ)て纏めて  すばる星   香西蒼天

多くの星の集団で、この星団の星達はほとんど同時に生まれたとして多くの天文学者に注目され、恒星の進化に貢献しました。ギリシャ神話によると、このすばるはプレアデスと呼ばれ巨人アトラスの七人の娘達です。この娘達に恋いをして毎日追いかけているのが狩人オリオン。いつまで経っても追いつきませんね。

 或るアメリカの天文学者は、日本はハワイにすばる望遠鏡があって空のすばる星団を観測し、観測に出かけるにはスバル自動車があるね。と、言ったとか言わなかったとか。

 地上を走るスバル自動車のエンブレム。すばる星団の星の配列を元に、筆者も関与して1958年に設定されたのです。星の配列がエンブレムに使われた最初で唯一の車です。

 毎年、環境省が行って来た事業に全国星空継続観察・スターウオッチングネットワークがあります。夜空の星を観察して、大気環境を監視しようという趣旨で全国の多くの人の参加を得て、1987頃から実施されて来ました。肉眼で天の川を観察したり、双眼鏡で星を観察し、星空の写真を撮影して夜空の明るさから大気環境を把握しようと言うものです。そして、冬の双眼鏡ででの観察の対象がすばる星団。適当に明るさの違う星がまとまっているので観察対象には好適なのです。さらに、多くの人に親しまれていることも重要でした。何しろ、清少納言の「枕草子」に、星はすばる。ひこぼし、などとして登場しているほどですから。別名は六連星(むつらぼし)。

  すばる星  西に傾き  春近し            香西蒼天

  寒空に  耐えて瞬く  六連星(むつらぼし)     香西蒼天

 夕空に西に傾くすばるを見るとき、もうすぐ春だと実感しますね。


2013年2月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2013年2月の星空です

2月になり、冬の星たちが最も観察しやし頃です。
オリオン座とその左にある冬の大三角を
まずは見つけてみましょう。よく澄んだ星空だったら、
冬の天の川もうっすらと見ることができます。
賑やかな冬の星空の中で、ひときわ輝いているのが木星です。
今はおうし座にありますが、来年のいま頃はふたご座の方に
移動します。惑星の動きに注意しておきましょう。


次 回も、お楽しみに

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