天文セミナー 第184回

『星の歳時記』



16.エチオピア王 ケフェウス

 秋の夜空で目立つのはカシオペア座ですね。この目立ちすぎるカシオペア座と北極星に挟まれた暗い空間にあるのがケフェウス座です。目立ちすぎるカシオペアの言動を恥じているのか、美貌を誇るカシオペア王妃の尻に敷かれた王とも表わされるほど目立ちません。妻カシオペアの美貌自慢が神の怒りに触れて娘・アンドロメダを生け贄に神に捧げた悲運の王・ケフェウス。男の苦しみを噛みしめながら北の空を回り続けます。日本などでは、地平線に沈むこともなく、休む暇もありません。
 この星座を見つけるのは、意外に易しい、と言う人もあります。それは、カシオペアと北極星が目印で、秋の天の川の縁に見えるいびつな屋根型をした五角形。北極星に近いことも理由の一つかも知れません。
 ところで、この星座の歴史は意外に古く、プトレオマイオスが決めた48個の星座に含まれています。こんなに暗い場所で目立たぬにもかかわらず古くから注目されていて、しかもペルセウスなどの星座と共に、エチオピアの王家の星座と呼ばれるのは中々理解しにくいものです。

  星座ありと  王妃が示す  ケフェウス座      香西蒼天

 ところで、この星座で忘れてはいけない星が2個あります。その内の1個は、セファイド型と呼ばれる規則正しく明るさを変える脈動変光星です。変光の原因は、星が膨らんだり縮んだりを規則的に繰り返します。ケフェウス座のδ(デルタ)星がその変光星の代表で、5.366日で3.48等から4.37等の間を行き来します。この型の変光星は、明るさの基準とされる絶対等級と変光周期の間に一定の関係がある事が知られていて(周期光度関係)、遠くの銀河、例えばアンドロメダ銀河などでこのセファイド型の変光星が発見されると、明るさと変光の周期を観測して、その銀河までの距離を求めることが出来ます。

  天体の  距離の指標や  δ(デルタ)星       香西蒼天

 天体までの距離を教える指標の一つで、最初にアンドロメダ銀河に応用されました。

 さらに、もう一個は石榴石(ガーネット)に例えられる真っ赤な星、λ(ラムダ)星があります。デルタ星の近くにある4等級の星で、肉眼ではほとんど目立ちませんが、双眼鏡や望遠鏡の力を借りると周りの星に比べとても赤いことが判ります。赤いことは、表面の温度が低い(2000度程)ことを示していて数百日という長い周期で明るさが変わる変光星です。

 空にまで  潜んでいるか  石榴石           香西蒼天

 エチオピア王家の主人公、ケフェウスに纏わる物語。如何でしたでしょうか。読者の皆さんも、古代の人に挑戦してみてはどうでしょう。


2012年10月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2012年10月の星空です
10月になりましたが、夏の大三角がまだ見えます。
夏の大三角から秋の星をたどるのもいいでしょう。
秋の星空は、秋の四辺形を目印にします。
1等星はありませんが、正方形のような四角を見つけます。
天の川が、夏の大三角〜カシオペヤ座にかけて
通っています。星がよく見られる夜は、じっくりと
たどってみましょう。


次 回も、お楽しみに

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