天文セミナー 第181回

『星の歳時記』



13.夏至と日時計(サンダイアル)

 舞台から退場するはずの筆者が、再び生き返っての登場です。甦ったからには、シェイクスピアにも再度登場して貰うことにしましょう。イギリス中南部にある古い都市、ソールズベリーには、1200年代に建てられ、ヨーロッパで第2の高さ123mにも達する尖塔を持った古い大聖堂があります。ソールズベリー大聖堂です。ここの市街に入る門の壁面に垂直に掛けられた素敵な日時計があり、影が時を刻み続けています。その垂直な文字盤の平面にLife's but a walking shadow と書かれているのを見上げることが出来ます。実は、この文章の源はシェイクスピアの戯曲にあるのです。つまり有名なマクベスの第五幕第五場でのマクベスの台詞:Life's but a walking shadow。小田島雄志訳:消えろ、消えろ、つかの間の燈火!人生は歩き回る影法師、あわれな役者だ、(後略)。坪内逍遙訳:消えろ、消えろ、束の間の燈火!人生は歩いている影たるに過ぎん、(後略)。是こそが元の文章なのです。この文面を見たとき、シェイクスピアの博学多才に私はとても驚きました。何と意味深い言葉ではありませんか。日時計の固定された柱の影、つまり影法師が時間の経過によって移動します。人も時間の経過と共に成長し年を重ねます。よく考えると、人生そのものが影法師Shadowなのかも知れません。

 人生の   歩みに似たり  サンダイアル(日時計)     香西蒼天

 追い越しも  追い越されもせぬ   影法師          香西蒼天

 有名な、ストーンヘンジはこの町の近くにあり、謎に包まれて現代を見つめています。

ヨーロッパの各地には、カトリックの立派な教会や聖堂が多数あります。よく見ると、古いものほど建てられている方角が定まっているようです。つまり、一定の方向に向かって建てられているのです。「神の子イエス」は「光の子イエス」でもあるので、教会や聖堂の正面入り口は建物の西側。そして、祭壇は東の壁に造られています。「光の子イエス」が朝日を一杯背中から受けて光が地上を照らすことがイメージされているのです。パリのノートルダム寺院、そして今回のソールズベリー大聖堂も全く同じ方向を向いて建てられ、礼拝されているのです。

 所で、太陽が地平線からもっとも高いのは夏至。毎年6月の下旬です。冬の長い、しかも寒さの厳しい北欧では、冬至の時のお祭り(冬至祭)と共に、太陽の恵みを一杯に受ける夏至を祝って夏至祭が行われるそうです。この夏至祭を題材にしたのが、先月登場のシェイクスピアの「真夏の夜の夢」。南西に低く傾いた乙女座。その乙女座にあり春の一つ星とも呼ばれる1等星・スピカを狙うのは天秤座に懸かる上弦の月。乙女を狙うキューピッドの弓と矢ととらえます。

 乙女座の    ハートを窺う   月上弦      香西蒼天

 キューピッド  弓矢が狙う    一つ星      香西蒼天

筆者の駄作、お粗末でした。


2012年7月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2012年7月の星空です
「大三角」が星空に二つ見られます。「春の大三角」と「夏の大三角」です。
西空と東空で、それぞれの大三角を見つけてみましょう。
夏の大三角が見つかったら、このうちの二つは七夕の星です。
夏の大三角の内、一番明るい星が「おりひめぼし」。
おりひめぼしから遠い方が「ひこぼし」です。
二つの星の間には、天の川があります。


次 回も、お楽しみに

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