天文セミナー 第177回

『星の歳時記』



9.春の星 双子座 ひな祭りの星

 ギリシャ神話の双子。この双子の冒険物語が、ホメロスのイリアスに語られていますね。イアソンを助けアルゴ船に乗って出かける物語で、仲の良いことで知られています。

 一方、日本では3月のひな祭りの頃に空高く上ることから”内裏びな””ひな祭りの星”などと呼ばれています。さらに、正月の門松に見立てて”門松”さらに”蟹の目””めがね”等々です。

 さて、この星座には夏至の時に太陽がある”夏至点=赤経6時0分”があります。この時の太陽の赤緯はプラス23度26分。この日の太陽が地球を一回りするとき、その真下の地上の緯度も23度26分。この23度26分の小円を北回帰線と呼びますね。前にも書きましたが、この回帰線が台湾の嘉儀の町外れを通っていて、その場所に記念碑が建てられています。ここで世界地図を広げて見ましょう。赤道から北へ23.5度ほど離れたところに北回帰線が描かれていますね。そして、北回帰線が通る場所をよく見てください。アフリカではサハラ砂漠、アラビア半島にも砂漠が広がります。アメリカ大陸ではメキシコに砂漠を見つけます。真夏の太陽が頭の真上から照りつける、灼熱の地です。真夏のメキシコや、5月のアリゾナ、テキサスでは日中の気温は45度を超えました。

双子座、そこには夏至点。

  夏至点の 双子の足下 燃える夏 香西蒼天

 その原因は何でしょう。ギリシャ神話によると、先月に登場したヘリオスとクリュメネの間に生まれたパエトンが原因だと言います。太陽の神ヘリオスにねだって父しか御せない太陽の車に乗ったパエトンが遂に太陽の車を御せなくなって、軌道を大きく外れて暴走し、遂に地上近くまでやって来たのです。地上のものは堪ったものではありません。遂に乾涸らびてしまい、その場所が砂漠になった、と言うのです。気温の高い場所で乾燥していると動植物の生存も容易ではありません。

 この砂漠地帯での星はどうでしょう。昔、砂漠に日が落ちて夜となる頃・・・という歌が流行ったことがあります。日が暮れると、一気に気温が下がります。東の地平線からは、突然に星が現れます。そして、西に沈む星は、アット言う間に沈みます。本当に突然です。地平線まで乾燥した空気に満たされているからでしょう。カリフォルニアやオーストラリアの砂漠に大天文台ができる訳です。

 カリフォルニアやオーストラリア、さらにアンデスの砂漠で見た星には一応感激しました。が、しかし、星と星との間の空間はとても暗いのですが今ひとつ透明感が不足に感じるのです。

 1970年代になって、東京天文台は木曾の山中に木曾観測所を開設し、口径105cmの特殊な光学系のシュミット望遠鏡を設置しました。この望遠鏡で観測を続ける内にアメリカのパロマー天文台の122cmシュミット望遠鏡と互角に太刀打ちできることが判りました。原因は、夜空が暗いこともさることながら、緑が多く空気中の細かな塵埃が少ないことでした。エコが叫ばれる夏。緑を大切に。

  今年また グリーンカーテン エコ暮らし 香西蒼天

 双子の足元の夏至点をグリーンカーテンで覆い、今年もエコで暮らします。


2012年3月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2012年3月の星空です
3月上旬は、曜日にまつわる星たちを見ることができます。
まずは太陽(日曜日)、西空の低空から、水星・金星・木星、
そして東の空に向かって、月・火星・土星 です。
いつの間にかオリオンをはじめとする冬の星たちが
西の空となり、東の空にはしし座や北斗七星といった
春の星が昇ってきました。


次 回も、お楽しみに

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