天文セミナー 第166回

『佐治の夜空を見てみよう!』



10.夜と昼ではどちらが遠くまで見えるか?

 さて、今月はクイズまがいのタイトルです。皆さんは、昼夜のどちらが遠くまで見えるとお考えでしょうか。小学生や中学 生に聞くと、間違いなく昼間の方が遠くまで見えると答えてくれます。この答えで決して間違いではありません。景色などは、昼間のほうが遠方まで見えるに決 まっているからですね。この質問自体が、おかしいと小学生や中学生は思っているに決まっています。
 ところで、私達が物を見るには光が必要です。 昼間には太陽の光、夜間だったら電灯の光で生活しています。光が無くては真っ暗の闇の世界です。物を見るということは何なのでしょう。光が物を照らして呉 れるからですね。照らすとはどういうことなのか考えてみましょう。光は、高温の物質から発せられますが、若しその光を反射するような物質があると、その物 質があるということが判ります。私達は、この光の反射によって物があるということを知るわけです。一方、光源、具体的には電灯や自動車のヘッドライトを直 視すると目が眩みます。これは光源自体を見たからですね。
 私達が、物を認識できるのは反射してきた光か、光源自体を見るからですね。若し、空気がないと昼間の青空は無く、反射するようなものが無かったら、ほとんど何も認識できませんね。
  昼間、物が見えるのは太陽などの光源からの光が反射して目に入って来るからです。夜は、真っ暗な空に星と言う「光」があります。この星は、自分で光を発し ているか太陽の光を反射して見えているのです。恒星と言われる星たちは、自分自身で光を発していて、その光が私達の目に届き、見ることができているので す。言い換えると、星は電球と同じように光源そのものなのです。
 さて、今月のタイトル夜と昼ではどちらが遠くまで見えるのでしょうか。昼間は、 太陽の強烈な光によって照らされます。そして、空は一面の青空になりますね。これなども太陽の光が、空気中のガス分子に当たり、その反射で青く見えるので す。夜間は、強烈な光を発している太陽は地平線の下に沈み、一面の星空に変わります。
 結局、昼間は太陽光を反射する光で物を見ているのですが、夜間は星と言う光源自体を見ていることになるのです。
  強烈な光を出している太陽までは、光の速さで8分ほど。ところが夜に見える星までの距離は、最近の進歩した技術による観測で数百万年ということが知られて います。最も遠い銀河までは130億年以上と観測されています。クイズの答えは、夜間の方が昼間より遠方が見える、ということでした。
 昼間より 遠方が見えるのが夜間だとすれば、遠くが見えるはずの夜に無駄な照明を夜空に向けることの愚かしさを知るはずですね。暗い夜空の下で、昔の人は星に親し み、物語を作り、星と人との繋がりを作り上げたのでした。地球が誕生して46億年が経過したと言われますが、そのときから夜空には星が光っていたのです。 そして、長い長い旅路の末に、私達の目に入ってきたのです。さらに、空には無数の星の数ほどの星がありますが、この星たちまでの距離はマチマチで、同じ距 離のものは殆どないでしょう。その星たちが出す光、その光が同時に見えているのですね。出発した時も、旅した距離も違う星からの光が我われの目に同時に見 えることの不思議さと面白さ。殆どの人が意識していない事実に驚かされるのですね。
 「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よど みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし」の書き出しで知られるのが鎌倉時代鴨長明によって書かれた「方丈記」。これを 書き直すと「来る星の光は絶えずして、しかももとの光にあらず」となるのでしょうか。古人の慧眼には脱帽ですね。




2011年4月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2011年4月の星空です
冬の大三角が西の空に追いやられ、夜早くに沈む様になりました。

代わって春の大三角が東の空によく見えます。
スピカのそばに土星がいますが、「正三角形」になるように
春の大三角を結びましょう。

次 回も、お楽しみに

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