天文セミナー 第144回

『日食物語(V)』『夏至』



日食物語(V)

 日食物語も今回が三回目。これまでのお話は如何でしたでしょうか。世界の神話や伝説には、よく似たお話があるものだと感じます。そして、その発端はどうやら古代インドのゾロアスター教にあるような気がしてなりません。あの有名な哲学者・ニーチェが書き残した哲学書「ツアラトゥストラはこう言った」のツアラトゥストラとはゾロアスターのドイツ語読みで、ニーチェはこのツアラトゥストラ(ゾロアスター)に言葉を借りて彼の哲学を書き記したのでした。
 2000年と翌2001年に、私はアフリカの旅に出かけました。そのアフリカの旅では、現地の人たちが歓迎の意を込めて現地の音楽で楽しませてくださったのです。その音楽は、打楽器の演奏。大小の打楽器がリズミカルに打ちならされ、心地よい感動の一時でしたが、その心地よさを誘ってくれるのはどうやら人間の心臓が刻む鼓動に共鳴している打楽器のリズム感だったようです。人間の発祥の地と言われるのがアフリカ、そして文明の発祥はインドの北西部との感をを強めたのでした。
 さて今回は、そのアフリカ。アフリカの東南部でマダガスカルと向き合うようなところモザンビークに伝わるお話です。モザンビークのバントゥ系の部族には、月の中の影(模様)と日食は太陽と月が喧嘩をしたのが元であると伝えられています。月は太古から青白くて、あまり光っていませんでした。この月は、まぶしいほどに美しく輝く翼で飾られている太陽が羨ましく妬ましい存在でした。ある時、月は太陽が地球を見ている隙をうかがい、黄金の翼から数本の羽を盗み自分を飾りました。これを知った太陽は、立腹して月の顔に泥水を浴びせました。このために月の顔には泥が付いて永久にとれなくなってしまったのでした。この時以来、月はその恨みを果たす機会をうかがっていて、太陽が気を許したた隙に、泥水を引っかけて仕返しをするのが日食だと言うのです。面白い話ですね。


夏至

 早いもので、もう夏至の季節になりました。一年中で最も昼間が長い日、として知られていますが、我が国などのように梅雨、地球規模で考えるとモンスーンの季節になると厚い雲に覆われてなかなか実感を伴いませんね。このモンスーンは遠くインド洋に源があり、ヒマラヤを越えて中国に吹き込み、東進して我が国まで到達しています。インド洋でたっぷりと水分を吸い上げた大気がその源で、バングラデイッシュから届きます。
 バングラデイッシュと言えば、サイクロンと呼ばれる台風が良く知られていますがこの強い風が変化するとモンスーンにその影響が現れるので、我々の日本でも大いに関心があるのです。
 さて、このサイクロンにしても、北アメリカに上陸して大きな災害をもたらすハリケーンにしても、その性格は我々が台風と呼ぶ強風と同じで、反時計回りの方向に強風を吹かせます。これは、地球の自転に関連があり、北半球では反時計回りですが南半球では時計回りになります。静止衛星、具体的には気象衛星が撮影した地球表面を見ると、南北の両半球に台風を認めることが有りますので注意して見てください。同じことを、小規模ながら体験することができます。例えば、プールの水を抜くときに現れる渦がそれです。
 話が夏至から飛躍してしまいましたが、インド洋で発生するサイクロンが遠い日本の梅雨に大きな関係が有ると言うことだったのです。
 モンスーン地域では、米の豊かな収穫をもたらす降雨ですが、一方では憂鬱な季節とでも言えるのでしょうか。日の出、日の入りを見ることが少なく、長い昼間を実感できぬまま暑い夏がやって来ます。ちなみにタイフーンを台風と訳したのは、気象学者として知られる藤原咲平。息女は気象学者で小説家の新田次郎夫人でやはり小説家で「流れる雲は生きている」の作者・藤原ていでした。
 北欧では、シェイクスピアの戯曲「真夏の夜の夢」の舞台が、ヨーロッパの森の中で妖精達の集まりで繰り広げられるのです。



2009年6月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2009年6月の星空です。
今年は世界天文年2009です。
そろそろ夏の星も見え始めました。
梅雨のころですが、晴れ間には星空を楽しみましょう。


次回も、お楽しみに

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