天文セミナー 第140回

『望遠鏡物語(3)』『望遠鏡物語(4)』



望遠鏡物語(3)

 長大な、いわゆる空気望遠鏡は、取り扱いがとても難しく、困難を極めます。この困難を克服するための研究が始められたのでした。1666年になると、有名なアイザック・ニュートンが、白色光が透明な物質に入って屈折するときには必ず波長ごとの色に分かれることを発見したのです。ところで、光が反射するときには物質の中を通過しません。このことは、光は色ごとに分散しないと言うことなのです。1663年には、反射鏡を使った望遠鏡のアイデアがグレゴリーによって発表されていましたが実際にこの反射望遠鏡を製作したのは1672年で、作者はニュートンでした。これがいわゆるニュートン式反射望遠鏡です。
 さて、このように3種の望遠鏡が発明され製作されましたが、当時はこの望遠鏡の製作には多くの困難が伴ったのでした。ガリレオが最初に作ったガリレオ式屈折望遠鏡は、口径42mm、全長2.4m、倍率9倍だったと言われていて、彼はこの望遠鏡のほかにも更に幾つかの望遠鏡を製作して使用していたと言われています。ニュートンが作った最初の反射望遠鏡は口径34mm、焦点距離159mm、倍率38倍でした。反射鏡は銅と亜鉛を混ぜた合金でした。今では考えられないことかもしれませんが、古代の人たちが使っていた鏡を思い出してみてください。いわゆる、銅鏡と呼ばれる鏡で、古墳などから出土して当時の文化を知る手がかりにされている鏡です。
 2種類の屈折望遠鏡と、金属鏡を使った反射望遠鏡は、早速天体観測に使われました。地上の物体と違って天体は日周運動で絶えず移動します。更に、焦点の鋭さも地上を見るものとは格段に鋭いものが要求されます。こうして、望遠鏡に使われるガラスに関する研究が続けられ、凸レンズと凹レンズを組み合わせることによって、ニュートンが見つけた波長による分散を補正する方法が発見されることになったのでした。いわゆる色消しレンズの出現でした。この色消しレンズは、この後大きく飛躍して天文学の発展に大きく寄与することになるのです。


望遠鏡物語(4)

 世界でもっとも大きな口径を持つ屈折天体望遠鏡はアメリカのヤーキス天文台の口径101cm、口径比19で1897年にクラークによって製作されました。その他、アメリカのリック天文台の90cm、口径比19のものが1888年の製作、そしてフランスのムードン天文台の口径83cm、口径比20と続きます。日本での最大口径のものは、国立天文台の口径65cmと京都大学飛騨天文台の同じく65cm屈折望遠鏡です。屈折望遠鏡の最大の悩みは、なんと言ってもレンズで集まった光がガラス材の中を通過して屈折し焦点を結ぶことにあります。更に、そのレンズを保持するためには強固なレンズ枠を必要とします。そして、枠に取り付けたままでレンズの向きが上下左右に変化させられるために起きる、レンズの変形に対する考慮もしなくてはなりません。
 レンズの枚数が多くなればなるほど、その要求は強くなってきます。最大の問題は、大きくて均質なガラス材を製作し、希望通りの球面に磨き、どのようにして変形を防ぐかと言う点です。例えば、私が勤務していた国立天文台の65cm大望遠鏡では、対物レンズ1枚の重さが何と250kg(金属枠を含んで)、これが2枚あるので合計500kg。そして焦点距離は11m。長大な筒が必要で、更にその筒がたわむことは絶対に避けなくてはなりません。少しでもたわむと、対象の星の観測に支障をもたらします。たわむことを避けようと、筒の中央部で支えている場所の筒の直径を大きくしてありましたが、たわみを避けることはどうしても不可能でした。こうして、屈折望遠鏡の大型化は頭打ちになって来たのでした。屈折望遠鏡の大型化に限界が感じ始められると、これに替わって反射望遠鏡が一躍脚光を浴びることになりました。それまで、反射望遠鏡の視野は屈折望遠鏡の視野に比べて格段に狭いことが欠点でした。この欠点を補う光学系が、ドイツの光学技術者・シュミットによって考え出され、いわゆるシュミット式望遠鏡が製作されたのです。この光学系は、それまでの望遠鏡の光学系とは違った特別な光学系を持つものでした。そしてこの望遠鏡はこれまでのものとは格段に広い視野を得ることができたのでした。1949年になると、アメリカのパロマー山天文台に122cmのシュミット望遠鏡が完成し、1948年に完成していた508cm反射望遠鏡との組み合わせで、多くの新事実を発見して天文学は新しい時代へと入って行く事になったのでした。そして、現在の天文学は日本の製作したハワイのマウナケア山の8.2m反射望遠鏡を頂点として科学の発展に大きく寄与しているのです。天文学者の飽くことを知らない要求に光学技術者が応え、その技術に強く支えられながらの天文学の発達の歴史でした。(次号に続く)




2009年2月の星空

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2009年2月の星空です。
今年は世界天文年2009です。
オリオン座をはじめとする冬の星たちで星空はいっぱいです。
オリオンの三ツ星を目印に、星空めぐりをしましょう

天文カレンダー 惑星たち
   
3日: 節分
上弦(半月)
4日: 立春(太陽黄経315°)
9日: 満月○
11日: 建国記念の日
14日: 水星が西方最大離角
(太陽の西に26°06′離れる)
17日: 下弦(半月)
18日: 雨水(太陽黄経330°)
20日: 金星が最大光度(−4.84等)
23日 水星食、木星食(どちらも午前中の日中)
24日 ルーリンすい星が地球に最接近
(地球との距離は6140万km)
25日: 新月●
28日: 月の近くに金星が見える
水星: 2月14日を中心に夜明け前の東の空低くに見える。
金星: 夕焼け空に見える一番星で、よいの明星とも呼ばれる。2月24日に−4.6等の最大光度となり、昼間の空にも見つけることができる。
火星: 夜明け前の東の空に昇ってくるがまだ低いため見つけにくい。
木星: 夜明け前の東の空に昇ってくるがまだ低いため見つけにくい。
土星: 暗くなるころ東の空から昇ってくる。まだ低いので観望好期は来月あたりから。

次回も、お楽しみに

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