天文セミナー 第135回

『カーナビ』『地球観測衛星』



カーナビ

 最近、自動車のフロント近くにカーナビが設置されているのをよく見かけるようになりました。新しく発売される新車には、このカーナビがすでに設置されているものも多くなり、レンタカーもカーナビが設置されていないと借り手が付かないとさえ言われているようです。このカーナビ、言わずと知れたカーナビゲーションの略で人工衛星から送られてくる電波を受信して、瞬時に解析し現在地を地図上に表示特定してくれる何とも便利な道具ですね。このカーナビには当然受信機がセットされていて、常時人工衛星から送られてくる信号を受信していますが、その信号には地図に相当するような情報は含まれていません。電波で送られてくるのは、時刻の信号だけ。ただし、幾つかの人工衛星に積み込まれている非常に高精度の時計からの時刻信号で、この時刻信号はどの人工衛星でも非常に高精度で合わせてあり、その時刻の受信時に僅かなずれから受信地の位置を解析して表示するのです。ここで、大きな問題があります。先ず、人工衛星の位置に精度が高いこと、つまり軌道の様子が高精度で決められていなくてはなりません。次は、多くの人工衛星に積み込まれている時計の精度。人工衛星の宇宙での速度は毎秒数kmです。この速度に十分耐えることができるような精度と、さらに多くの人工衛星に積み込まれている時計相互の時刻の精度。さらに、地上での地図情報、言い換えると経緯度が高精度で決められていること。これらが整って初めて使用が可能になるのです。
 幸い、日本は高精度の地図が整っています。幕末の頃、伊能忠敬によって成し遂げられ、逐次改良が続けられてきた日本地図。この地図無くしては、幾らカーナビが設置されていても無用の長物となってしまうのでしょう。地図の元になるのは、天体観測による経緯度の決定です。伊能忠敬が測量を続け、天文観測を行った場所が、彼の残した地図上に示されているのは彼の努力の足跡として後世に残さなくてはならないことと感じます。
 それはそれとして、便利な道具カーナビ。このカーナビの元になっているのがGPSと呼ばれる方式で全地球測地方式とでも訳すのでしょうか。この方式が活躍するのが、地震などで起きる地すべりや地殻の変化の検出。鳥取県西部地震や新潟などの地震の時に大活躍しました。これも、詳しい経緯度の判っている地図が整っていたからです。



地球観測衛星

 地球観測衛星、どうも馴染みが薄い感じがしますね。宇宙を飛行している人工衛星には、絶えず何かを基準にして遠い遥かな宇宙へと飛行を続けているのです。特に、地球を遠く離れて、太陽系の外周まで飛び続けるには、目標になる不動点、宇宙旅行では明るい幾つかの恒星が基準になります。この他にも、姿勢制御のための目標とか幾つかの目標点が定められています。
 ところで、表題の地球観測衛星は、何も宇宙遥か遠くまで飛行するものではありません。字の通り、地球を観測することが目的なのです。1970年代のことでした。初めて、地球を宇宙から観測して地上の様子を知ろうという計画が実施されました。静止衛星では地球の自転に同期してしまうので地球の全表面は観測できません。また、地球の自転軸に直角の軌道でも、地球の両極は観測不能です。そこで考えられたのが、地球の両極を通る軌道でした。極軌道と呼ばれる軌道で、この軌道に人工衛星を入れて運用するのは大変困難でした。それは、地球の自転で地表が移動する運動、地球の赤道上で毎秒およそ300mの運動速度が利用できないことになるからです。その困難を乗り越えて、アメリカが極軌道衛星を成功させたのです。この人工衛星からのデータは、地上に送られて初めて利用可能なのですが、衛星が受信不可能な場所、つまり地球の裏側にあるときには基地局では受信できません。そこで、日本にも受信局が設置され、この衛星から送られてくるデータを受信・解析して取り込むことになりました。設置場所は埼玉県の鳩山。この観測所が地球観測所。ある日そこを見学に訪問しました。大きなパラボラアンテナが、高速で衛星を追尾します。アンテナの移動の速度から、宇宙空間を移動している衛星の速度を実感したのです。そして、地上の雲の姿などが如実に映し出されるのを驚きの眼で体験しました。このような地球観測衛星が開発され、地球の資源物質の存在が、分布状態とともに知られるようになり、地球をもっと詳しく知ることができるようになったのです。



2008年9月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2008年9月の星空です。
夏の大三角が頭の真上に見えます。
東の空には、秋の四辺形が見られるようになりました。
星空も、確実に夏から秋に移り変わっています。

天文カレンダー 惑星たち
   
5日: 土星が合(太陽の向こう側)
7日: 白露(太陽黄経165°)
上弦(半月)
10日: 月の近くに木星が見える
11日: 水星が東方最大離角(見かけ上、太陽の東に最も離れる)金星が近くに見える
12日: 金星の近くに火星が見える
13日: 水星の近くに火星が見える
天王星が衝(太陽の反対側)
14日: 中秋の名月
15日 満月○
19日 水星の近くに火星が見える
20日: 秋の彼岸の入り
22日: 下弦(半月)
23日 秋分の日(太陽黄経180°)
29日 新月●
水星: 夕方の西空低くに見える。見ごろは上旬〜中旬だが地平線に近い。
11日に明るい金星が近くにいるので見つける目印にしよう。
金星: 日の入後の西の空低くに明るく見える。11日に水星、13日に火星と並ぶ。
火星: おとめ座の方向で夕方西の空低くに見える。
13日に明るい金星が近くにいるので見つける目印にしよう。
木星: いて座の方向で、南の空に見える。
マイナス2等級でとても明るいが夜中には沈んでしまう。
土星: 5日が太陽の向こう側の「合」でしばらくは見えない。

次回も、お楽しみに

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