天文セミナー 第134回

『携帯電話』『地デジ』



携帯電話

 天文セミナーに携帯電話とは、皆さんはきっと不審に思われるでしょうね。書いている私も同様に、天文学とはミスマッチとも思いますがそれでも敢えて書くことに致します。 今や、携帯電話は国民的な持ち物とさえ言われるようになり、その数は1億個を越えているとさえ言われるような普及ぶりです。小学生からお年寄りまで多くの方が、耳に当てながら会話を楽しんでいたり、また携帯メールという便利なものを片手で操作して文通を楽しんでいます。電車の車中で、隣の席の友人と見せ合っているのは女子高生。だが、危険極まりないのが自動車を運転中の携帯電話の操作と通話。さらには自転車に乗っていての同じような操作。他人にも自分自身にも危険なことは目に見えるようです。
 さて、この携帯電話ですが、通話やメールを可能にしているのは何でしょう。ほとんどの人は、便利なものが使えるようになって満足でしょうが、その仕組みについては殆ど理解していないのが実状ではないでしょうか。携帯電話が可能になったのは言うまでも無く電子技術の進歩のお陰ですが、この技術を支えているのは人工衛星という天文学にも大きく寄与している技術なのです。
 携帯電話で使用されているのは言うまでも無く無線通信。決められた波長の電磁波、電波ですね。この電波を基地局まで送るためには、その電波を中継する中継局が当然ながら必要になります。電波の届かない場所では圏外という表示が現れますが、これが電波の届かない所に居ることを教えてくれているのです。さて、この電波の波、いわゆる波長とか周波数と呼ばれている振動数は○○ヘルツなどと呼ばれて表示されています。これは、その電波が一秒間に何回振動しているかを表わす数字なのです。
 一秒の時間の定義は、以前は太陽の南中から次の南中までの間の86400分の1とされていました。この時間の間の振動数が○○ヘルツと呼ばれる数値なのです。この1秒の時間が不正確であったなら、振動数も決定できません。一秒の定義は、国際天文学連合という世界中の天文学者の集まりで取り決められるのです。意外なところにも天文学が寄与していましたね。



地デジ

 地デジという言葉を最近頻繁に聞くようになりました。今まで使われていたアナログ方式によるテレビが、この地デジ方式に変更になり、数年後には総てのテレビ放送がこの地デジ方式に変更になるので、と何となく急かされるような気持ちにさせられてしまいます。地デジとは何でしょう。地上波(電波)をデジタル方式にして行う放送のことで、綺麗な画像に加えて多くのデータが同時に送れるという特長があるそうです。受信者の中には、今までのアナログ方式で十分だったのに何で変更させられるのだろうかと訝る声も聞かれるようです。アナログとデジタル。何となくデジタルの方が新しく高級な感じがしないでもありませんが。
 私達の体は、殆どがアナログ方式で動かされていますが、ロボットになると殆どがデジタル方式によって機能させられています。現在作られて使われている自動車にしても、多くの電子回路が集まって機能しています。私が在職中の東京天文台。この頃はアナログから急速にデジタルへと移行するときでもありました。観測の記録の多くは手書きによるもので、観測野帳が手放せませんでした。夜中の観測室の薄暗い電灯の下で、夜露に湿ったノートに鉛筆を舐めながらかじかんだ手で記録を書き綴ったものでした。そして、得られるデータは写真や紙テープ。いずれもがアナログでした。また、望遠鏡の心臓とでも言える追尾装置も、重錘(おもり)が重力で降下する力で動かしていました。この望遠鏡や記録装置が、やがてデジタル方式に改良され、さらに計算機(コンピュータ)制御になって行きました。このデジタル方式の元になったのが2進法と呼ばれる数学の方式でした。0または1の信号で数値や文字を表わすのです。現在もこの方式に変わりはなく、時代の先端を行く技術として発達を続けています。デジタルと言う言葉の語感から、時代の先端を示すとも感じることができますが、0と1の持つ大きな意味にも思いを馳せてみるのも良いことではないでしょうか。そして、このデジタル方式を発明し普及させた0という概念とその時代をも感じてみませんか。



2008年8月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2008年8月の星空です。
夜9時ぐらいに、夏の大三角が頭の真上に見えます。
南の空少し低いところには、木星が明るく輝いています。

天文カレンダー 惑星たち
   
1日: 皆既日食がロシアや中国などで見られる
新月●
3日: 月の近くに土星が見える
4日: 月の近くに火星が見える
7日: 旧七夕、立秋(太陽黄経135°)
9日: 上弦(半月)
12日: ペルセウス座流星群が極大
13日: 月の近くに木星が見える
14日 夕方の西空で、金星と土星が並んで見える
17日 部分月食が見られる
(部分食が始まるのが夜明け前の4:35で、
欠けながら月が沈む)
満月○
23日: 処暑(太陽黄経150°)
24日: 下弦(半月)
26日 下弦(半月)
31日 二百十日
水星: 夕方の西空に低い。9月11日が東方最大離角となるので8月後半になるほど条件は良くなるが、それでも低い。金星と並ぶ23日頃が見つけるチャンス。
金星: 夕方の西空低くに見える。8月23日頃には水星とならんで見える。
火星: しし座〜おとめ座へと動くが、夕方西の空低く条件は良くない。
木星: 南の空のいて座の方向に見える。マイナス2等級でとても明るい。
7月9日に太陽の反対側の衝になったばかりで観測に最も良い頃。
土星: 9月5日に太陽の向こう側になる合となるころなので、見つけるのは難しい。

次回も、お楽しみに

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