天文セミナー 第126回

『デジカメ』『山羊座の回帰線』



デジカメ

 デジカメ。今では、大変ポピュラーな呼び名になってきたデジタルカメラです。感光材料のヨウ化銀や塩化銀の替わりにCCDと呼ばれる電子機材を使ったカメラで、画素数が幾ら、というような表現で表示されています。このCCDが、一般用として使われ始めたのは1970年台の中期だったと覚えています。今では、ある広さをもった2次元のものが普通ですが、当時はピクセルと呼ばれていたエレメントが1列に並べられたものしかなく、資料を撫ぜるようにスキャンしてデータを取得したものでした。ちょうど、東京天文台が木曽の御岳近くの標高1150mの場所に、口径105cmのシュミット望遠鏡を設置して観測を開始した頃のことでした。木曽観測所の105cmシュミット望遠鏡で写せる星空の広さは36平方度。一辺が36cm角のガラスの乾板を使いました。もちろん、感光材料はヨウ化銀が使用されていました。この乾板を望遠鏡に装着して、夜空に向けて数十分の露出を行い、得られた写真から目的天体の座標値や濃度を測定するのです。観測もさることながら、測定と整約がまたまた大仕事です。何しろ、乾板の大きさが普通ではないのです。そこで、アメリカ軍から譲られたばかりのCCDアレイをアメリカの天文学者の厚意で譲り受けてテスト使用したのでした。何しろ、エレメント(ピクセル)の数も少なく、サイズも小さくて中々思うように行きませんでした。当時のピクセルサイズは、写真の感光材のグレインより大きく、物理的分解能が低かったからでもありました。こうしてCCDを使って36cm角の乾板をスキャンすると得られるデータ量は、当時使われていた磁気テープでおよそ十巻にもなって、とても整約時に手におえるものではあり
ませんでした。このCCDも、その後大きく進歩し、1000万画素にも達した2次元のものが手軽にカメラに装着されていて、一般に使われるようになってきて、美しい写真がいとも手軽に、誰にでも写されるようになってきました。
 天文で、最大の関心事に「夜空の明るさ」があります。現在、環境省が行っている「全国星空継続観察・スターウオッチング・ネットワーク」でも、このCCDカメラが使えるかどうかと大きな関心を持っていますが、友人が検査したところまだまだ測定に使用できるほどには安定したとはいえない状況なので、今まで通りの写真に頼ろうと考えられています。安定した製品が早く出回るようになることを期待しましょう。


山羊座の回帰線

 今年の冬至は、12月22日。北緯35度付近の北半球に住む我われ日本人にとっては昼間がもっとも短い日として親しんでいます。昼間の長さが決まるのは、太陽の地平線からの高度で、天文学では半日周弧と呼び、天体が地平線上にある時間を表わします。夏の太陽の高度は高く、従って昼間の時間が長く、冬の太陽高度は低いので昼間の時間は短くなります。昔の暦、いわゆる旧暦は太陰太陽暦と言って月の満ち欠けを基準にし、太陽の運行によって決まる季節を加味して作られていました。その基本になっていたのが冬至。圭表と呼ばれた柱を地面に垂直に立て、その影がもっとも長くなる日を観測から求め、冬至を決めたのでした。地面に作られる影の長さが長いほど、長さの変化が観測しやすいからでした。こうして、冬至が暦作成の基本になっていました。
 さて、冬至のときの太陽は、いうまでも無く冬至点にあることになります。そして、夏至の時の太陽は夏至点にあります。この点を地球の赤道に平行に結んだ線を回帰線と呼びますね。北回帰線は、日本近くでは台湾の嘉義の町外れを通ります。1980年の初め、この場所を訪ねたことがありました。北回帰線を示す大きな石碑が建てられていたことを覚えています。この北回帰線のことを「かに座の回帰線・Tropic of Cancer」、そして南回帰線のことを「やぎ座の回帰線・Tropic of Capricorn」と呼ぶ慣わしになっています。ところで、星座図(星図)を見ると、夏至の太陽がある場所は「かに座」のとなり「ふたご座」、そして冬至の太陽は「やぎ座」のとなり「いて座」にあることになります。これは、地球の首振り運動(歳差)の結果生じたもので、ほぼ星座一つ分に相当します。旧来の呼び名が、現在でもそのまま使用されている証拠です。この事実からも、星座が考えられ、作られて使用されていた時代を推測することができるのです。天文学、そして星座が、ずいぶん古くからあるものだということを証明することなのです。



2007年12月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2007年12月の星空です。

冬の大三角が見えるようになってきました。
時間帯によっては、夏の大三角と冬の大三角
両方を見ることができます。

天文カレンダー 惑星たち
   
1日: 下弦(半月)
月の近くに土星が見える
6日: 月の近くに金星が見える(明け方、東)
7日 大雪(太陽黄経255°)
10日 新月●
14日: この頃、ふたご座流星群が多く見られる
17日: 上弦(半月)
19日 火星が地球に最接近(一晩中観察できる)
22日 冬至(太陽黄経270°)
23日: 天皇誕生日
24日: 振替休日.クリスマスイブ
月の近くに火星が見える
25日: クリスマス
31日: 大晦日.2007年さようなら
水星: 太陽の向こう側にいるため見えない。
金星: 夜明け前の東空で明るく輝く。(明けの明星)
火星: 地球に接近中で一晩中見え観察に最も良い。地球への最接近は12月19日。
木星: 太陽の向こう側となるためしばらく見えない。
土星: 観察には少し早いが真夜中に昇ってきて、夜明けごろ空高くに見える。

次回も、お楽しみに

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