天文セミナー 第120回

『一枚のマウスパッド』『夏至』



一枚のマウスパッド

 先日、ある人から1枚の円形のマウスパッドを頂きました。パソコンに付属するマウスの動きを滑らかにするものとして多くの人に使われているマウスパッド。マウスという名前の由来は、ねずみに似た形だそうです。紐によってパソコン本体に連結されたものや、電波で結ばれたもの、さらに最近では光(赤外線)で本体と通信しているものなどがあるようです。しかし、そのいずれもがマウスパッドを使用しているようですね。
 さて、佐治天文台の1階ロビーには古い星図をプリントした大きな円形のテーブルがあります。来館された方は、きっと見られたことと思います。1700年
代は、星座絵、しかも着色した美しいものが多く作られ、星空へのイメージを強くアピールしました。佐治天文台の103cm望遠鏡へ上る階段には、その中の幾つかが展示されていて、昔の西洋の天文学を伺うことができます。今は無くなっている星座もあるでしょうし、作者によって星座に描かれた神々、人物、そして動物が違っていることに気付きます。
 さて、今回頂いたマウスパッドには、1730年代に描かれた星座絵がプリントされていました。現在では、イギリス王立協会の博物館として広く親しまれている、グリニッジ天文台の土産物として販売されているもので、オッテンという人の描いた星座絵だと説明されていました。北天が同心円に描かれていて、黄道の極を中心に極座標で経緯線、赤道からは赤経と赤緯の線。北極星は、歳差の分だけ外れた場所に見ることができます。詳細に見ると、現在は使われていない幾つかの星座が描かれていて、見ていて楽しくなるようなものでした。
 毎年、恒例になっている小学校の児童を相手の星遊びで、星座を覚えるにはどうすればよいのでしょうか、としばしば聞かれます。星座=ギリシャ神話との固定観念が、背景にあるようなので、「自分の星座」を作って楽しみましょう、ということにしています。星星を繋いで肉付けして、自分の星座として楽しむのも良いものではないでしょうか。自ずと星に親しむことができるでしょう。



夏至

 6月22日は夏至。1年中で最も昼間の時間が長い日、として知られています。太陽は、ほとんど真上、頭の上から照り付けます。ところが、日本はちょうど梅雨の真っ盛り。厚い雲に覆われて太陽はほとんど顔を見せてくれません。その所為で、夕方など意外に早く暗くなるのです。ところで、最近の外国映画を見ると、意外に西欧の神話や伝説に題材を求めたものがあることに気付きます。北欧の伝説、ジークフリート伝説に題材を求めたのが、有名なワーグナー作曲の楽劇「ニーベルングの指輪」。さらに、同じ題材による映画「神々の黄昏」でしょう。このように多くの話題を持つのが北欧の伝説。これらが、多くの愛好者によって今なお引き継がれ、多くの芸術作品として親しまれているのです。
 そして、これらの伝説が北欧という場所で作られ、語り継がれてきた背景には、緯度が高く夏と冬で大きく違う気候がありました。冬は太陽の姿はほとんど見ることができず、短い夏には自然が一斉に花開くのです。そして、そこで繰り広げられるのが、夏の夏至祭。この日を境に日に日に太陽は南に低くなってゆきます。シェイクスピアの有名な戯曲「真夏の夜の夢」も、このような夏至祭を背景に作られました。多くの妖精が、深い森の中で楽しく時を過ごし、人々も妖精の楽しみに連れられて時を過ごすのです。「白雪姫と7人の小人」も、やはり同じような背景があったに違いありません。そして、これらの伝説が語る場所は、いずれも大きな森の中か、森を持つような場所です。西欧の森。この森は、日本で一般に見られる森とは大きく違っていて、ほとんど平らな土地で傾斜がありません。日本の森では、尾根筋に出て下ると必ず沢があり、沢を下ると人里に出られますが西欧の森では、そうはいきません。森の中では方角も定まらず、きっと迷子になるでしょう。このような森こそ、妖精などが活躍するのに最適な場所だったのでしょう。
 緯度の高いヨーロッパでは、夏至がとても大切に扱われ、多くの芸術作品を生み出したのでした。



2007年6月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2007年6月の星空です。

早くも夏の星たちが見え始めました。
梅雨の晴れ間、真夜中には夏の天の川を楽しむことができます。

天文カレンダー 惑星たち
1日: 満月○
2日: 水星が東方最大離角(夕方、西)
6日 芒種(太陽黄経75°)
8日 下弦(半月)
9日 金星が東方最大離角(夕方、西)
11日 月の近くに火星が見える(未明)
入梅(太陽黄経80°)
15日: 新月●
18日: 月の近くに金星が見える(夕方、西)
19日: 月の近くに土星が見える
22日: 上弦(半月).夏至(太陽黄経90°)
28日: 月の近くに木星が見える
30日: 満月○
水星: 2日が東方最大離角。上旬は夕方の西の空低く見える。
金星: 9日が東方最大離角。夕方の西の空に見えています。高度変化に注目。
火星: 夜明け前の東の空に見えます。12月に地球に接近しますので、これからが注目。
木星: さそり座にあり、日没後の南東の空に見えます。これからが木星のシーズン。
土星: しし座にあります。西の空に見えますが、観察は21時頃まで。

次回も、お楽しみに

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