目には青葉 山ホトトギス 初かつお
江戸時代に歌われ、江戸っ子気質をあらわすと言われている狂歌でしょう。ホトトギスは、初夏の風物の一つとして多くの人に親しまれていますが、一方では他の鳥の巣に自分の卵を托す托卵という習性があることからあまり好まないという人もあるようです。
1970年代後半、完成したばかりの木曽観測所で観測に明け暮れしていた頃、遠く近くで鳴くホトトギスの声をしばしば耳にしたものです。ある日の早朝、観測を終えて宿舎に帰る道すがら、足元になにやら影のようなものがくっ付いてくるのに気付きました。どうやらそれは自分の影のようです。西向きに歩いていたので振り返ると、東空低くちょうど木曽駒ケ岳の上空に一際明るく金星が懸かっていました。最大光度の頃だったので金星の強い光が自分の影を地上に落としていたのでした。ホトトギスの鳴き声を聞くたびに、この時の情景が瞼に浮かぶのです。さて、このホトトギスに托して発行されたのが正岡子規に依る文芸誌「ホトトギス」。そして、肺結核で、何度も喀血を繰り返した正岡子規の最後の言葉とも言われているのが「鳴いて血を吐くホトトギス」。「鳴いて血を・・・」では、俳句として未完成です。どうしても上の句が知りたくて堪りませんでした。。あるとき、愛媛県松山市を訪ねる機会があり、正岡子規を記念して建設された「子規記念館」に立ち寄りました。そこには多くの関係資料が展示されていましたが、「鳴いて血を吐くホトトギス」の上の句が見つかりません。学芸員の人に尋ねたのですがどうも不明の様子。残念ながら引き下がったのでした。
ホトトギスの鳴き声が山々にこだまする頃になると、海岸には潮干狩りを楽しむ人々の姿を見ることができます。毎年、4月から5月に掛けの大潮の時には、大勢の人が打ちそろって潮干狩りに出かけます。これも、引き潮が大きな浅瀬を作るからです。
月が我々に及ぼしている数々の影響の中で、最も顕著なのが潮の満ち干でしょう。そして、人の生死にも深く関わっていると古来言い伝えられてきました。外洋に面した場所ではあまり目立たぬかもしれませんが、内海では干満の現象を強く体験できるのです。そして、「月の引力の見える町」というキャッチフレーズも生まれるのです。
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