天文セミナー 第115回

『視直径が最大の太陽』『冥王星』



視直径が最大の太陽

 惑星の軌道を表わすのが軌道要素といわれる数値です。その中で、惑星から太陽までの距離が最も短くなる点のことを近日点と呼びますね。このような軌道要素は、何も惑星に限ったことではなく、最近多く発見されている太陽以外の恒星の周りを回る惑星系とでも言える天体や、以前から良く知られている食変光星についても求められています。そして、それらにも太陽系と同じように表現して近星点と呼んでいます。
 さて、地球が太陽に最も近づく近日点は毎年1月の上旬で、太陽と地球の平均距離=1天文単位に対して0.98333倍ほどになります。実際の距離に換算すると、1億4711万kmほどになります。この近日点に対して、太陽との距離が最も遠くなるのが遠日点で毎年7月の上旬です。このときの太陽までの距離は1.01670天文単位で、近日点の時に比べると0.03337天文単位、即ちおよそ5百万kmも遠いのです。ケプラーが発見した惑星の運動の法則、つまりケプラーの法則によると太陽から遠いほど実際の運動も、見かけの運動もその速さは遅くなります。この結果、冬の太陽は早く移動し、夏の太陽は遅く動くことになります。地球の北半球に住む人にとっては太陽が近いにも拘らず冬が寒く、太陽が遠い夏に暑いという一見矛盾した結果が現れますね。これは主に太陽の高度に拠る日照時間の長短に原因があり、太陽の遠近の違いによるものではありません。太陽から地上に届くエネルギーは、太陽と地球の間の距離が5百万kmほど変化しても全く変動しないことが知られています。そして、地球の大気圏外で太陽に正対する1平方cm当り受けるエネルギーは毎分1.96カロリーで、この値を太陽定数と呼んでいます。さて、地球が近日点付近にあるときの太陽の見かけの直径は角度で32分35秒、遠日点では31分31秒ほど。これは、角度で1分ほどの差になります。この差が原因の1つになって、冬に起きる皆既日食は継続時間が短く、夏に起きる皆既日食は継続時間が長いのです。


冥王星

 ここ数年、毎年地元の小学校に頼まれて星の話をしに行くことにしています。相手は、やんちゃ盛りの4年生。全員が10歳になっているか、これからなろうという年齢です。4年生全員ともなると数組に編成し、担任の先生は纏めるのに一苦労。時には校長先生の声が響きます。そこでは、いつも「星遊び」。太陽には校長先生、大惑星には大き目の生徒、その間を通過するように動く小天体には担任の先生に引率された生徒たち。運動を通して太陽系の星々を体験させようとしています。4年生は、すでに太陽系の惑星の順番などの知識があり、水、金、地、火、木、土、天、海、冥と澱みなく言うことができます。そして、今回は冥王星が分類変えされたことも知っていて、冥王星の名前を言わないで終わる子供も何人かいました。中には、冥王星は何処に言ってしまうの?、と疑問を投げかけてくる子もいます。いきなり冥王星が、矮惑星に分類変えされたため、正確にその事実を理解していないのです。
 ところで、もう大分前になりますが、小学生に惑星の太陽からの順番を質問したことがありました。返ってきた答えは、土、天、冥、海でした。ちょうど冥王星が海王星の軌道の内側に入り込んでいた時期に当っていたので、新しい事実をフォローしているのに感心したのでした。そして、「ご明解:冥、海」、と褒めてあげたのでした。
 昨年、惑星の分類がIAU(国際天文学連合)で議論されているころのことです。1914年から1916年にかけてホルストによって作曲され1917年にオーケストレションされた組曲「惑星」に、コリン・マシューズによって2000年に作られた「冥王星」が加えられたCDが日本で発売されたのでした。ホルストによって組曲「惑星」作られた後、1930年にトンボーによって発見された「冥王星」が加わって太陽系の姿が完成されたと思われました。しかし今回、改めて惑星の分類が変えられたのでした。「星界」や「音楽界」に多くの話題を提供するのも、惑星(プラネット:惑わす星、さまよう星)という本来の意味そのものなのでしょうか。さてさて、冥王星の行く末は?



2007年1月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2007年1月の星空です。

西の空にはまだ秋の星たちが見えますが、
東の空には冬の星たちでにぎやかです。
オリオン座を目印に、星座をたどってみましょう。

天文カレンダー 惑星たち
1日: 元日
3日 満月○
4日 明け方、りゅう座(しぶんぎ座)流星群が多く見られる
6日: 小寒(太陽黄経285°)
8日: 成人の日
11日: 下弦(半月)
19日: 新月●
20日: 大寒(太陽黄経300°)
21日: 月の近くに金星が見える(夕方.南西)
26日: 上弦(半月)
水星: 1月前半は見かけ上太陽に近い。下旬になると日の入り後の西空低くに見える。
金星: 宵の明星で日の入り後の西空で見える。20日と21日は細い月が近くに見える。
火星: 午前5時過ぎに南東の空から昇ってくる。地球からの距離はまだ遠い。
木星: 午前4時頃に南東の空から昇ってくる。さそり座のアンタレスの近くで輝く。
土星: 午後7時頃に東の空から昇る。夜中に望遠鏡で観察好期。7日早朝、月に近づく。

次回も、お楽しみに

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