天文セミナー 第111回

『天降石:隕石』『地球を測る(高度と方位)』



天降石:隕石

 佐治天文台の1階ロビーには、隕石が展示されていて入館者は誰でも手にとって見て感じることができます。この隕石は、個人の寄贈に依るもので今から半世紀ほど前にシベリアに落下したものを、寄贈者達が探し求めて収集したものです。隕石は、今でも大変に貴重な物で、昔は天から降ってきた石=天降石と言われ神社の本殿やお寺の本堂の奥深くに「ご神体」としたり「ご本尊」として祀られ、信仰の対象にされていたことがありました。福岡県直方市には今から1150年ほど前の貞観3年4月7日(西暦861年5月19日)と書かれた箱に収められている隕石がありますが、この記述が正しければ実際の落下が目撃されたものとしては世界最古のものになるだろうと言われています。
 隕石は、石を主成分にした「石質隕石」、石と鉄分を含む「石鉄隕石」、そして鉄とニッケルの合金でできている「鉄隕石(隕鉄)」に分類されています。人工天体が地球以外の惑星に到着して表面の物質を持ち帰ったり、分析して組成を調べたりすることが可能になる迄は、隕石は地球上で手にとって調べられる唯一の天体でした。この隕石の組成を調べることによって、太陽系の誕生から現在までの謎を解く鍵が見付かったり、太陽系の天体を造る元素が、特異なものではないことなどが分かって来ました。そしてさらに、地球に落下してくる隕石の中には「火星」や、「月」の表面にあったと考えられるものもありました。火星や月にも、地球と同じように太陽系の中を運動している小さい天体が衝突していることを裏付けることになりました。
 世界中で、1年間におよそ1千万個ほどの隕石が落下していると考えられていますが、ほとんどは海の中や砂漠、さらに広大な森林地帯に落下し、人によって落下が目撃されて発見されるものはとても少ないと考えられています。宇宙からの贈り物、隕石。手にとって研究できる天体。これからも、太陽系の研究に大きな役割を果たし続けることでしょう。


地球を測る(高度と方位)

 佐治天文台の行事として、すっかり定着してきた「地球の大きさを測る」というイベント。毎回、多くの参加者によって支えられてきました。そして、実際に体験して実感が得られたという人が多いのは、企画側としてはとても嬉しいことです。さて、実際に地球の大きさを測ろうとした人は誰で、いつ頃のことだったのでしょう。それは佐治天文台のイベントに任せることにして、地球が丸い球状であると言うことは今では誰でもが知っている事実ですが、それを体験することはなかなか容易ではありません。
 北海道大学の前身・札幌農学校の寮歌の一節には「北極星を仰ぐなり」と歌われ、そして同じように鹿児島大学の前身・第七高等学校の寮歌の一節には「北辰(北極星)斜めに指すところ」と歌われています。
 日本全図を造ったことで有名なのが伊能忠敬。この伊能忠敬が、先ず実証しようと考えたのが地球の大きさでした。彼は、緯度の一度がどれだけの長さになるのかを実測して、地球の大きさを求めようとしたのです。その際、使ったのが北極星の高度と方位角の測定でした。伊能忠敬は、当時知られていた観測器具。高度を測る象限儀や平面の角度を測るための方位盤などを携え、一歩づつ歩数を数えながら、また時には量程儀(複数の歯車を組み合わせた距離計)を使って日本中、特に海岸線に沿って測量して行ったのでした。当時、考えられる最高の精度で観測して得られたのが「日本全図」。世界で高く評価されたのでした。その観測を支えたのが、当時の幕府天文方・高橋至時とその一統。さらに観測器具を開発・作成した指物師と呼ばれる技術者の集団でした。そして、測定したのが北極星の高度と方位で、北極星の高度が地球上の緯度を示すことを日本人として最初に体験して地図という形で表現したのでした。そして、北海道で仰ぎ見た北極星が、鹿児島では斜め方向に見えることを如実に歌い上げてあるのが、北海道大学と鹿児島大学に残されている寮歌ですね。昔の人の自然観察の鋭さを、改めて知る思いです。
 地球上を南北に旅すると、地球が丸いことを実感し、東西に旅するとき時差を体験します。矢張り、地球は丸い球状なのでした。



2006年9月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2006年9月の星空です。

夏の星たちでいっぱいです。
夏の大三角を目印に、天の川を探してみましょう。

天文カレンダー 惑星たち
1日: 上弦(半月)
6日 天王星が衝(観察好期)
8日: 白露(太陽黄経165°)
満月.夜明け前に部分月食が見られる
14日: 下弦(半月)
18日: 敬老の日
22日: 新月
大西洋上で金環日食(日本では見られない)
23日: 秋分の日.秋分(太陽黄経180°)
27日: 月の近くに木星が見える
30日: 上弦(半月)
水星: 太陽の向こう側にいるため見ることができない。
金星: 夜明け前の東の空の低くに見える。
火星: 夕方の西空にとても低く、日没後すぐ沈んでしまう。
木星: 夕方の一番星として南西の空に見える。午後9時ごろには沈んでしまう。
土星: 夜明け前の東の空に見られるようになってきた。

次回も、お楽しみに

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