天文セミナー 第110回

『へびつかい座とへび座』『黄道星座』



へびつかい座とへび座

 夏の夜空を飾るものとして先ず最初に挙げられるのは、何といっても”天の川”でしょう。無数の星たちの集まりが、まるで川のように見えることからつけられた名前ですね。 ヨーロッパでは、ミルクの流れと見立てて”ミルキー・ウエイ”。中国では”銀漢”などと呼ばれるようです。
 アフリカでは、面白い伝説が伝えられているそうです。その伝説によると「あるところに1人の娘が住んでいました。その頃の天には星がまったくありません。夜になると月があるだけです。娘はもっと光るものが欲しいと思って、自分の家のカマドの灰をつかんで天に向かって放り上げました。天に投げ上げられた灰は、あまり輝かずに白くボンヤリと光っていました。」。これが天の川なのだということです。
 南アフリカへ行った時の事です。夜の頭上には、さそり座を初め南の星座が懸かり、そこを満々と光の水を湛えた天の川が流れていました。あまりの美しさについつい時の経つのを忘れていましたが、ハット気付いて足元の闇を見ると自分の影がそこにありました。本当の”星影”だったのです。昔の人は、このような星空の下で生活し、考え、行動していたのだと実感しました。
 さて、この天の川の東側に見えるのが”へびつかい座”と”へび座”。へび使いによって東西に分割されている珍しい星座です。そして、このへびを捕まえた巨人へび使いが足元にさそりを踏みつけているように見えるのは毒虫(さそり)が夜空で暴れないようにととの神々の配慮なのでしょうか。事実、へび使いはギリシャの医師・アスクレピオスの姿だと言われています。国際連合の下部機関にWHO(World Health Organization=世界保健機関)があり、その機関のマークが杖の周りに巻きついたへびを月桂樹が取り巻く姿です。このマークの由来も、アスクレピオス、つまり”へび使い”にあるのでした。脱皮を繰り返す”へび”を死からの甦りと考えた結果で、その甦りを司るのが医師アスクレピオス、つまりへび使いなのです。


黄道星座

 太陽が天球を進むとき、この道筋を黄道と呼びます。この黄道は12の星座を通っていて、太陽はだいたい1ヶ月に1星座の割合で通過して1年12箇月で一巡りしてもとの星座に戻っていきます。この12の星座を黄道12星座と呼び、うお、おひつじ、おうし、ふたご、かに、しし、おとめ、てんびん、さそり、いて、やぎ、みずがめの諸星座です。これらをつないだ天の区域を、黄道帯、または獣帯と呼びます。獣帯というのは動物をかたちどった星座が多いからなのでしょう。
 黄道12星座の歴史は、現在定められている88の星座の中で最も古く、古代オリエントの人類の文化発祥と共に始まったとされています。昔のヨーロッパでは、それぞれの星座に宮を考えて、これを黄道12宮と呼びました。太陽が毎月、1つの宮に滞在して、次の月に次の宮へ移動すると考えたのでしょう。第一の宮は白羊宮といいますが、これは当時の春分点が”おひつじ座”にあったからなのです。そして、第十二の宮は双魚宮、うお座にあたりますが現在の春分点は、地球の首振り運動=歳差のためにこのうお座に移動してしまっています。
 ところで、以前黄道には13星座があって現在の12星座は誤りだ、ということが言われたことがあります。それは、さそり座の北のへびつかい座の南の一部が黄道に掛かっているからというのが理由でした。ところで、現在使われている星図などには星座を区切る直線が描かれていますが、この様に直線で星座の境界線を決めたのは1930年の頃でした。それまでは、星の無いところ、つまり見えない場所を通る曲線で描かれていたのです。しかし、星座が作られた頃には、星と星とを線でつないで骨格にし、さらに肉付けをして来たものでした。したがって星座と星座の間にはどちらにも属さない空間がありました。このことを考えるとき、先ず決められたのが黄道12星座だったことを思い出してみましょう。



2006年8月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2006年8月の星空です。

夏の星たちでいっぱいです。
夏の大三角を目印に、天の川を探してみましょう。

天文カレンダー 惑星たち
2日: 月の近くに木星が見える
上弦(半月)
7日 水星が西方最大離角(明け方、東)
8日: 立秋(太陽黄経135°)
土星が合(太陽の向こう側)で観察不能
9日: 満月
12日: この頃、ペルセウス座流星群が多く見られる
16日: 下弦(半月)
22日: 月の近くに金星が見える(明け方、東)
23日: 処暑(太陽黄経150°)
24日: 新月
水星: 夜明け前の東空に見える。7日に見かけ上太陽から離れるので月初めが良い。
金星: 明けの明星として夜明け前の東の空にとても明るく輝いて見える。
火星: 見かけ上太陽に近く、観察は難しい。
木星: 夕方に一番星として南西の空に見え、夜半には沈む。
土星: 8月8日が太陽の向こう側にやってくる「合」のため見ることはできない。

次回も、お楽しみに

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