天文セミナー 第106回

『ガンマ(γ)線爆発』『年の初め』



ガンマ(γ)線爆発

  今から30数年前のこと。天文学にも新しい波長での観測が始まり、多くの成果が発表されるようになりました。特に、日本の人工天体、当時の宇宙科学研究所の開発したX線観測衛星が太陽系空間を飛行しながら全天を隈なく観測していた頃の話です。当時、日本のX線天文学は世界に1歩も2歩も先んじていました。そして、この観測で発見したのが大変短い時間だけ急激に短波長の領域でエネルギーの数値が上昇する特異な天体がある、ということでした。よく調べてみるとX線よりも短い波長であるガンマ線の波長域でした。大変短い現象なので、中々捕らえることができません。全天を観測区域とした観測網が必要になります。研究者の依頼を受けて、国内のアマチュア天文家の間にこの情報を流し、観測に協力を依頼しました。この、ガンマ線の急上昇のことをこれ以来ガンマ線星爆発と言うようになり、大きな関心を呼ぶことになったのです。全天のどこで、何時、どれくらいの明るさで観測されるのかまったく不明の状態での監視でした。輝きの度合いは大きくても、継続時間が短いためよほどの高感度の感光材料でなくては捕らえられません。さらに、複数の観測データがなくてはその現象を証明することは不可能です。こうした背景を元に、多くのアマチュアの人たちの協力が得られたのですが、結果は思わしくなく、ついにそのままで時間だけが経過して行ったのでした。その後、このガンマ線星の爆発の機構が次第に解明されてきて、光と電波、さらにX線による観測が進み、この現象は光速に近い速度で星から噴出しているジェットから放射されるということ、そしてこのジェットが我々の地球の方向を向いているときだけにみられるということも次第に判ってきました。こうして、次第に正体が判明してくると、この現象も星の終末に起きる超新星爆発、特に極超新星と呼ばれる現象に伴って起きると推論されるようになりました。そして、ついに2003年に発見された極超新星SN2003jdの観測で、その証拠が捕らえられたと、国立天文台の研究者が発表したのです。これも、ハワイ観測所の「すばる」望遠鏡による成果でした。


年の初め

 4月に入って年の初めとは、どうしたことか?。と、思われることでしょうね。だけど、よく考えてみてください、毎年4月になると、学校では新学期が始まり、国や地方自治体では新しい会計年度が始まります。やはり、年の初めに変わりはありません。このように、世界各地、各国では幾つもの年の初めが実際に存在しています。もっとも普通に使われている年の初めは1月1日ですが、この日が年の初めと決められて世界中で使われ始めたのはそれほど昔のことではありません。日本で古くから使われていたのは、太陰太陽暦、いわゆる旧暦でした。この暦には幾つかの不自由な、そして季節に合わないような事例があるために明治5年に現在の太陽暦に変更され、現在の1月1日を年の初めと決めたのでした。現在、世界の国々で使われている太陽暦の原型は、遠くバビロニア、エジプトにあって、特にエジプトではナイル河の氾濫の時期や太陽神の信仰などから太陽が天球を1周する周期を単位とする暦が使われていました。そして、その暦がローマに取り入れられたのでした。ローマでは、それまで1年を10ヶ月、304日としていましたが、これでは不都合と知って2ヶ月を加え、12ヶ月、355日として使用しました。それまでのローマで使われていた暦によると、年の初めは「軍神月」、次は「開花月」、「成長月」、「繁茂月」、そして「第5月」と進み、最後は「第10月」でした。これでは不都合が起きることに気付き第10月の次を「始め月」、さらに「清め月」と決めたのでした。こうして、現在の2月、つまり「清め月」が年末になったのでした。これを、ジュリアス・シーザーが改定して「始め月」を年初としました。この始め月がJanuarius、つまりローマ神話で初めて登場する頭の両側に顔のある神・ヤヌスからの命名です。このヤヌスは、門番で2つの顔で絶えず門の両側を見つめていてこの神が扉を開かないと年が明けないと言われています。年の神に相応しい神なのかもしれません。その他、立春正月、冬至正月、キリスト教で使われる教会暦やクリスマス正月、果てはイスラム教の国で使われているイスラム暦など、多くの年初が考えられ、実際に使われてきました。年初は、言わば年のスタートライン。何時に決めても取り上げるほどの不都合は起きませんが、やはり国際的には同じ日であったほうが不都合がありません。やはり元旦は現在の1月1日でよかったのですね。



2006年4月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2006年4月の星空です。

冬の星たちはそろそろ見納めです。早いうちに見ておきましょう。
日没がずいぶんと遅くなり、昼間の長さが長く感じられます。

天文カレンダー 惑星たち
3日: 月の近くに火星が見える
5日: 上弦(半月)
清明(太陽黄経15°)
7日: 月の近くに土星が見える
9日: 水星が西方最大離角(明け方、東)
14日: 満月
15日: 月の近くに木星が見える
20日: 穀雨(太陽黄経30°)
21日: 下弦(半月)
25日: 月の近くに金星が見える
28日: 新月
29日: みどりの日
すばると月が大接近(夕方、西空)
水星: 9日に西方最大離角で明け方東の空
金星: 明けの明星として観察好期
火星: 観察好期
木星: 観察好期
土星: 観察好期

次回も、お楽しみに

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