天文セミナー 第99回

『宇宙人は?』『名月』



宇宙人は?

 私が、東京大学東京天文台に在職中のことです。年の瀬も迫り、多くの人たちが慌ただしく動き回る頃の早朝、当時埼玉県の都幾川村にあった東京天文台堂平観測所に警視庁大森警察署から1本の電話が掛かってきました。羽田空港の上空に不審な飛行物体が飛来し、レーダーにも映らないので飛行中のパイロットがUFOではないかと気味悪がっていて、さらに付近の住民も恐怖心に駆られて不安がっていると言う内容でした。
 丁度そのころは、明け方の空に最大光度で輝く金星がありました。関東平野の冬は北西の強い風が吹き抜け、大気は透明度を増します。透明度が増した明け方の空に輝く金星の強い光が引き起こした騒動でした。ところで、このように確認できないような飛行物体のことをUFOと呼んでいますが、このような未確認飛行物体UFOがすぐに宇宙人の襲来に結びつけられ、さらに宇宙人は地球を占拠してしまうと短絡的に思われています。困った問題です。
 さて、では実際に宇宙人は居るのでしょうか?。昔の人は、地球が宇宙の中心で、太陽や月、そして星々は総て地球を中心にして1日に1回転すると考えましたが、これはコペルニクスによって否定され、現在では太陽を中心に惑星達が回転していることが知られていますね。見る人の立場が変わると見えるものが変わって来るのです。こう考えると、地球はもちろん太陽系も、銀河系も特別なものではないことに気付きます。そうです、太陽系が特別な存在でなくなれば人間などの地球に住む生物も特別な存在ではなくなります。
 現在の天文学の研究の対象の一つに、太陽系外の惑星を探すというテーマがあります。日本でも、何人かの研究者が力を注いで観測・研究に励んでいます。人間は、地球にしかいないなんて考えると淋しいではありませんか。独りぼっちは、イヤですね。広い宇宙のどこかには、きっと生物が住んでいて地球人と交流したいと考えているかも知れません。


名月

 旧暦の8月15日の月と言えば、中秋の名月です。そして、16夜の月を十六夜(いざよい)、17夜の月を立待月(たちまち月)、18夜の月を居待月(いまち月)、19夜の月を寝待月(ねまち月)と続きます。秋の夜長を月見で過ごす昔の人の雅(みやび)を感じさせてくれる呼び名です。ところで、この呼び名はどうして生まれたのでしょう?
 暦によると、16夜の月は15夜の月の出の時刻からはそれほど遅れていません。そして、17夜の月の出も同様です。なぜでしょう?。月が満ち欠けを繰り返す周期を朔望月と言って、29.530589日です。そして、月は1日に平均しておよそ13.2度ほど東へ移動します。月の出が遅くなって行く原因です。ところで、太陽は夏至に最も北にあって、秋分の頃には丁度赤道上の秋分点で、これから赤道の南へと下がって行きます。そして十五夜の満月は太陽の反対側で赤道の春分点近くにあることになります。このころの季節が仲秋でその時の十五夜、もっとも満月とは限りませんが、中秋の名月。今年の中秋の名月は9月18日の夜、そして東京での月の出は17時58分、十六夜(いざよい)の19日は18時26分、立待月(たちまち月)の20日は18時53分、居待月(いまち月)の21日は19時26分、寝待月(ねまち月)の22日は20時01分。月の出は平均で1日に40分ほどづつ遅れますが、仲秋の名月頃の月の出はあまり遅れないのです。他の季節についても、新聞などの暦の欄で調べると良いでしょう。ちなみに、今年2005年の春分の頃の満月後の月の出の時刻は3月26日(満月)18時24分、27日は19時27分、28日は20時33分で、29日は21時42分。なんと1日に1時間以上遅れて月の出があるのです。月の出や月の入りなどは、その時の天体の天球上での移動方向と地平線との角度によって変わるのです。昔の人が、自然に対してとても関心が深かったことを物語るものでしょう。



2005年9月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2005年9月の星空です。
夏の大三角はまだまだよく見えていますが、
東の空は秋の星でいっぱいです。ただし、
「いっぱい」といっても明るい星が少ないので、
ちょっとさびしい感じでしょうか・・・。

天文カレンダー 惑星たち
4日: 新月
7日: 白露(太陽黄経165°)
8日: 月の近くに金星が見える
11日: 上弦
17日: 水星が外合(太陽の向こう側)
18日: 満月(中秋の名月)
19日: 敬老の日
23日: 秋分の日(太陽黄経180°)
25日: 下弦
水星: 17日に外合で観察不適
金星: 観察可能(夕方、西)
火星: 真夜中前に東空
木星: 夕方西空。低空で観察不適
土星: 明け方東

次回も、お楽しみに

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