天文セミナー 第95回
『地軸と極軸』『端午の節句とティーポット』
地軸とは、言わずと知れた地球の自転軸のことですね。この地軸を延長して天球と交わるところが天の極です。北に延長すると天の北極、南に延長すると天の南極です。もう40年以上前になりますが、北極回りのヨウロッパ航路が新設された頃の話。当時の東京天文台の先生が、北極回りの飛行機でヨウロッパで開かれる国際会議に出席し、帰国した時の旅行談で、北極の上空を飛行したとき地上から上空に向けて延びる地軸が見えた、と話したのです。その結果、飛行中常に太陽が見え、所用時間は短く目的地には早く到着できた、と聞かせてくれました。勿論、地軸が見えたなど全くの冗談でしたが。当時は、北極も南極も未知の場所。聴衆は、概念的には理解していても体験したことはありません。 さて、この地軸が宇宙空間に対して不動でないことは、紀元前にヒッパルコスによって歳差現象として発見されていました。そして、この現象は半径23.5度でおよそ25800年の周期で回転し、たまたま現在の北極星が天の北極に近いところにあることを知っていますね。およそ2千5百年ほど昔には、現在の小熊座のベータ星が天の北極に近い場所にありました。 |
5月になると、さわやかな皐月晴れの日が続きます。そして、薫る風に乗って、高く泳ぐのが鯉のぼり。勢いよく流れ落ちる滝をものともせずに昇る鯉に見立てて、男子の成長を祈った行事なのです。この行事を、古くは端午の節句と言い、現在のこどもの日が受け継いでいるのです。ところが、端午の節句は、本来は旧暦、つまり太陰暦で行って来ました。旧暦は、太陽と月とを考え合わせたうえで、月の満ち欠けを主体とした暦です。したがって日付と月の形は一致するのが原則です。伝統的な端午の節句は、5月5日。したがって夕方の西空には、月齢5の月が見えていることになります。そこで、一首。 ところで、5月と言えば新茶の季節。野山に茶摘み歌が聞こえていたのは、もう昔話。それでも茶店の店頭には新茶が、香しい香りを漂わせています。お茶を入れるには、道具が必要ですね。日本で通常使われるのは急須。陶器や磁器で作られたものが多く見かけられます。緑茶を常用する日本人には、程良い温度が醸し出す香りと濃度が重要な要素になるためでしょう。緑茶以外にも、多くの種類があって世界中でたしなまれていることは知られていますね。最も多いのが紅茶。ロンドンの郊外、グリニッジに行ったときのこと。港に一艘の帆船が係留されていました。そして、この船はティークリッパー、またの名をカティサーク。お茶を運ぶ快速船でした。そして、急須はティーポット。オーストラリアでの南斗六星の呼び名が同じティーポット。形からの命名のようでした。 |
次回も、お楽しみに |