天文セミナー 第94回

『数と順番』『月は朧に』



数と順番

 私たち日本人は、物を数えたり順番を決めたりするとき、自然に呼び方を変えています。一つ、二つ、三つ、・・は数。そして一、二、三・・・は順番を表します。さらに、日付はその月の順番であること、何日目というのは日数であること。
 最も身近な数の観念で、これは日本人の感性の豊かなことの一面を表しているのではないかとも思うのです。そこで、三日月とか、十五夜、二十三夜の呼び方は当然、順番を表していることに気づきます。三日目の月が三日月、十五番目の夜が十五夜、そして二十三番目の夜が二十三夜ですね。
 ところで、世界には月ごとの呼び名に多くの意味が含まれているのです。日本では1月から始まって12月まで。これは当然順番を表していて、それぞれ1番目の月、2番目の月、最後は12番目の月と言うわけです。そしてさらに、1月=睦月、2月=如月、3月=弥生、4月=卯月、・・・12月=師走、と日本固有の呼び名でも呼ばれます。

 次に、よく使われるのが英語の呼び名。1月はJanuary、2月はFebruary 、3月はMarch、4月はApril、そして12月はDecember。この語の意味は何でしょう。Januaryはローマ神話に登場する神ヤヌスにちなみます。ヤヌスは門番、門の両側に気を配り彼が門を開かないと通れません。新年の門を開くのがヤヌスの役目、そして始の月。Februaryは清めの月、Marchは軍神の月、Aprilは開花の月、Juneはギリシャ神話のジュノにちなんで付けられた繁茂の月、このようにそれぞれの月の呼び名に意味が含まれているのです。7月と8月には、ローマの皇帝ジュリアス・シザーとアウグストスが深く関わり、9月以降は順番を示すSept.=7、Oct.=8,Nov.=9,Dec.=10、等の名残を見ることになるのです。
 中国に始まり日本などで昔使われた暦には、季節毎に孟、仲、季をかぶせて、初、中、終、を指したのです。仲秋と言う言葉にその名残を見ることができますね。
 数と順番、そしてそれぞれの名前の持つ意味を調べるとき、その文化を発生させた民族の思いが伝わってくるような気がしませんか。


月は朧に

 「月は朧に東山・・・」。有名な祇園小唄の一節ですね。春、4月にもなると空気中の水蒸気が増し、何となくしっとりと肌に感じてきます。お花見の季節がやって来たのです。

 ところで、イスラム教の国ではラマダンと呼ばれる断食をする月が決められていて、その間は日のある時間帯には食事をすることは勿論、水を飲むことの禁じられています。大変な苦行を味わうことになるのです。もう、30年以上昔のことですが、当時私が勤務していた東京大学東京天文台に東京にあるイスラム教会、正式にはモスクと呼ばれるところから、断食月の始まりを知りたいので協力して欲しいという依頼がありました。そして、その役目を私が負うことになりました。具体的には、サウジアラビアのメッカでその月になって初めて細い月が見えた日が断食月の始まる日と決められていて、東京では見えなくてもメッカで見えると断食月が始まるので、メッカで月が見えるかどうか調べて欲しいと言うことでした。東京とメッカでは経度でおよそ90度の差があり、メッカの方が約6時間ほど遅いのです。したがって、東京で見えなくてもメッカでは見えるかも知れないのです。現在のようにパソコンが発達しているわけではなく、両地点の経度差を求め、その間の月の運動量を計算してご連絡したのでした。本来は、その場所で実際の月を担当者が尖塔に上って監視していて細い月が見えると大きな声で伝えていたそうです。日本のように月も朧にかすむような場所ではとても不可能なことと感じたのです。砂漠の国に長く続いた伝統行事で、イスラム歴は正確に月の満ち欠けに頼った太陰暦なのです。それ以来、長い間イスラムの聖典コーランや暦を頂き、モスクが新築されたお祝いに招待され、一寸だけイスラムの文化に浸りました。



2005年4月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2005年4月の星空です。
冬から春に、星空も移り変わってきました。
東の空には木星も昇ってきて、土星とあわせて、
惑星観察にいい頃となってきました。

天文カレンダー 惑星たち
2日: 下弦
5日: 清明(太陽黄経15°)
9日: 新月
16日: 上弦
20日: 穀雨(太陽黄経30°)
24日: 満月
水星: 27日に西方最大離角(明け方東空)で下旬は観察好期。
金星: 3月29日に外合(太陽の向こう側)となり、観察不適
火星: 未明に東空
木星: 4日に衝。観察好期
土星: 真夜中に沈む

次回も、お楽しみに

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