天文セミナー 第93回

『世界地図と日本』『マップとアトラス』



世界地図と日本

 旅行に出かけるときの準備として、行き先の情報が記載されている地図での下調べと、乗り物の時刻調べがありますね。行き先の情報が不足すると、後で後悔し、時刻調べが不十分だと時間が無駄になることがあります。旅行には地図と時刻表は必需品。


太平洋と大西洋

地図の印象がまったく異なりますね。

 そして、世界情勢などを知るためには世界地図が手元にあると何かと便利です。私は、食事の時に食卓の上に敷く敷物に世界地図が印刷されたマットを使用しています。テレビなどで世界情勢が解説されるときとても有効で、たちどころにその国の所在場所を知ることができるのです。この地図は、10年以上前にアメリカのニューヨークで購入したもので経度0度の線を中央に、左右に西経と東経が目盛られていて、日本は右の端に近く、日本で販売されている世界地図とは印象が大きく違います。購入した当時は、違和感が強くなかなかなじめませんでしたが、長年愛用している内にその合理性に納得しました。それは言うまでもなく、経度0度の地、(イギリスですが)を挟むように経度線が広がり東西の両半球が一目で見渡せるからです。この地図を愛用する内に日本の地球上の位置、日本に伝えられた西洋のいわゆる近代文明の経由地等に思いを巡らせることができるようになりました。日本が中央にある世界地図では、大ききな面積を占める太平洋が中央の大部分で、ヨーロッパやアメリカは地図の端。世界を見る目がどうしても偏ってしまうのではないかとさえ思うようになりました。さらに、北半球の国で作られた地図は、殆ど例外なく北が上に印刷されていますね。これなどは北極星が地上に見える地の文化なのではないでしょうか。そのことを示すのが南半球で印刷された地図。しっかりと南を上にして書かれていました。同じことが、夜空の案内図として使われる星座早見盤。北半球では天の北極が、南半球では天の南極が中心です。当然のことですね。


マップとアトラス

 地図や星図のことをマップとかアトラスと呼びますね。例えば、自動車で出かけるときの下調べに使うのが道路マップ、星の位置などは星図=スターマップで調べます。ところが、辞書を調べるとアトラス=地図、星図などと記載されています。
 講演会などで、地図のことを英語でなんと言いますか?、と質問するとほぼ100%の人がマップと答えてくれます。決して間違いではありませんが、アトラスと言う単語はなかなか見つかりません。なじみが薄いのでしょうか。
 1700年代に作られた世界地図などを見るとき、ワールド・アトラスと大きく書かれているのに巡り会うことがあります。そして、その地図の欄外に、天球を肩に担いだ人物が描かれていることがあります。この人物こそ、ギリシャ神話に登場する力持ちの大男・アトラスなのです。ギリシャ神話によると、アトラスは最高神ゼウスと勇敢に戦ったがついに破れアトラスの属した巨神族は追放されたのです。アトラスは特に勇敢だったため、特別な罪を与えられました。そして、世界の西の端に立って天空の縁を肩に担う刑罰を宣告されたのです。こうして、アトラスはその後もずっと天空を担い続けているのです。


天を担ぐアトラス

さじアストロパーク内・コスモスの館所蔵
香西 佐和子さん作

 西暦79年に大爆発を起こして、麓の街ポンペイを埋め尽くしたのはベスビオ火山。その後、このポンペイは発掘され多くの遺跡が出土しました。そして、その出土品の中から直径2メートルもの天球を肩に担いだ大理石のアトラス像が発見されました。彼が担いでいた天球には、当時の星座が刻まれ、それが現在も使われている星座と同じであることが判りました。
 マップとアトラス。いずれも地図や星図に使われる言葉。両肩に天を担うアトラスは、秋の星座でおなじみのペルセウスに魔女メドウサの首を突きつけられ、アフリカの北海岸に連なる雪を頂くアトラス山脈となったといいます。山になったアトラス。疲れ、苦しむことのなくなったアトラス。こうして地図となって現在も天を担い続けているのです。



2005年3月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2005年3月の星空です。
冬から春に、星空も移り変わってきました。
東の空には木星も昇ってきて、土星とあわせて、
惑星観察にいい頃となってきました。

天文カレンダー 惑星たち
4日: 下弦
5日: 啓蟄(太陽黄経345°)
10日: 新月
18日: 上弦
20日: 春分(太陽黄経0°)
26日: 満月
水星: 13日に東方最大離角(夕方西空)で観察好期。
金星: 29日に外合(太陽の向こう側)となり、観察不適
火星: 未明に東空
木星: 観察好期
土星: 観察好期

次回も、お楽しみに

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