天文セミナー 第89回

『宇宙は水である?』『ギリシャとローマ』



宇宙は水である?

 ギリシャの哲学者ソクラテスの第一の弟子がプラトン。この、プラトンによって師ソクラテスの名前が広く世間に広まったとも言われています。そして、このプラトンによって、ギリシャ哲学の祖、タレスにまつわる逸話が伝えられているそうです。
 それによると、ある星の美しい夜、ウイットに富んだかわいい女召使いを供にして、星を観測するために空を見ながら歩いていて、井戸に落ち込んだそうです。すると、その召使いは「あなた様は、熱心に天のことを知ろうとなさいますが、ご自分の面前のことや足下のことには、一向お気づきにならないのですね」と冷やかした。タレスは、間髪を入れず「宇宙は水で出来ている」と応えた、と。
 今、この伝えの真偽は問わないことにして、我が国でも各地で五輪塔を見かけることができます。この五輪塔の由来は、仏教の密教で言う物質構成の要素で、下から地、水、火、風、空を表しています。そして、これと同じような考えが古代ギリシャにもあったことが知られています。目で見え、体で感じられるような物質で宇宙が構成されていると考えるのはもっともなことなのでしょう。


M84、M86あたりの銀河団

いろいろな形の銀河が写っています。

 さて、現在の天体物理学と宇宙論は、宇宙はビッグバンに因って始まったと教えてくれています。宇宙が膨張していることを示す観測が基礎になっての考えです。これは、ハッブルと言う天文学者が、遠い銀河ほど速い速度で遠ざかっているという、速度と距離の関係を発見したことに始まります。
 そして、恒星に含まれる水素と他の元素の割合から、現在の宇宙論はビッグバンで最初に出来た元素は水素で、残りのほんのわずかがヘリウムだったと、教えます。こうして出来た水素は、恒星の活動によってその他の元素に変換されているのです。「地球は、青かった」。ソ連の宇宙飛行士ガガーリンの言葉です。水の惑星、地球の代名詞にさえなった有名な言葉ですね。そして、この水は水素と酸素の結合したもの。酸素は地球上で作られたと言われますが、水素はビッグバンが作った最も単純な元素、そしてビッグバン以外では作られないのです。その水素を含む水。とても大切ですね。やはり、宇宙は水で出来た?


ギリシャとローマ

 星座にまつわる物語と言えば、誰でも先ず思い付くのがギリシャ神話でしょう。ホメロスという人が書き残したと伝えられる長編叙事詩「イリアッド」と「オデッセイア」。この叙事詩は、今からおよそ3500年前にギリシャとトロイが、王妃ヘレンを巡って争った物語です。この物語に登場する英雄や勇士が、後にギリシャ神話の主要な登場人物?になったのでした。ところで、天文学の発達の上で大きな功績をあげたコペルニクスやケプラー、そしてガリレオなどが輩出されたのは、ルネッサンス時代。13世紀末から16世紀初めの頃のことです。さて、このルネッサンスとは日本語で「文芸復興」とか「学芸復興」と呼ばれていますが、そもそも「再生」を意味する言葉なのです。再生を意味するからには、その源がなくてはなりませんね。では、その源とは、何でしょう。


ペルセウス座

アンドロメダ姫を救った勇士・ペルセウスです。
星座の名前は、流星群でも有名ですね。

 ギリシャ神話に登場する神々が、名前を変えられてローマ神話に再登場します。ローマが、その前に栄えたギリシャ文化、すなわちヘレニズム文化に大きな影響を受けていたからです。ルネッサンスとは、神が主役であった中世に別れを告げ、人間性を重視したギリシャ・ローマ時代に回帰しようとする考えのことだったのです。こうして、現代に続くギリシャ・ローマ神話が作られ、星座の伝説として伝えられたのです。



2004年11月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2004年11月の星空です。
頭の上に秋の四辺形が見えます。
秋真っ盛りといったところですが、
東の空には、早くも冬の星たちが昇ってきました。

天文カレンダー 惑星たち
5日: 下弦
7日: 立冬(太陽黄経225°)
12日: 新月
19日: 上弦
21日: 水星が東方最大離角
22日: 小雪(太陽黄経240°)
27日: 満月
水星: 21日に東方最大離角
金星: 明け方の東空
火星: 観望不適
木星: 明け方の東の空
土星: 真夜中前にに昇ってくる

次回も、お楽しみに

天文セミナーに戻る