天文セミナー 第88回

『お月様の数』『月のクレーター』



お月様の数

 このところ数年に渡って、小学校4年生を対象に話を頼まれることが多くなりました。どうやら、ゆとりの時間という時間帯が設定されていて学校の先生以外の社会人に、教科以外も含めて幅の広い話を小学生にも聞かせたいとの配慮のようです。
 天文を学んできた私に、望まれるのは決まって星の話。どうやら小学4年生は、理科の教科に星や月が取り上げられているからのようです。そこで、生徒を目の前にして質問の第1は「月」。月の数は?と問いかけます。ほとんどの生徒は、頭を抱えながら悩みます。中には友達と囁きを交わす子もいます。指名すると、3個、5個、果ては分からない。意外でした。私たち大人の常識では、月は1個と決まっているではありませんか。
 子供の感覚では、毎夜空に見える月は、そこに突然現れ、時間の経過と共に西に移動し、翌日また新しい月が、昨夜とは違う場所に生まれてくると感じていたのかも知れません。そこで、ある月を30日としこれを呼ぶとき何というかと聞きました。例外もありましたがほとんどの返事は一ヶ月。一箇月。この言葉を分解すると1箇の月。つまり、1箇の月が新しく生まれ、成長して満月になり、やがて欠け始め、30日の後に消え去ってしまう事を表しているのでは?と。そして、12箇の月が生まれて消え去るまでの期間が1箇年。
 何となく辻褄が合うではありませんか。


満月

真ん丸いお月さま。

 ところで、同じようなことが世界の国の中にも残されています。昔、多くの月が夜空で輝いていました。そのため、人間は明るい月夜が続くので眠れませんでした。そこで、神様にお願いし、月を1つにしてもらったのです。30日毎に、消長を繰り返す事になった月、暗くなった夜。人々はやっと、眠ることができるようになったのでした。
 現在の、明るくなりすぎた夜。明るすぎて眠れないことがあります。何となく他人事とは思えませんね。


月のクレーター

 月の表面を見ると、多くの模様が見えます。望遠鏡のない時代、その模様をウサギと見たり、かに、女の人の横顔などと感じていました。そして、月に多くのロマンを感じたのでした。その現れの一つが、中国や日本など今でも行われている中秋の名月、月見の宴でしょう。この、月の表面の仮面を剥いだのは、17世紀のイタリアの天文学者、ガリレオ・ガリレイでした。そして、月はあばただらけだ、と言ったとか言わなかったとか?。 このあばた、つまりクレーターの成因について、長い間多くの学者が議論を戦わせたのでした。議論の主題は、月の地殻の構成。そして、表面の凹凸は噴火によるのか、隕石の衝突によるのかが議論の中心でした。


月の表面

大小さまざまなクレーターでいっぱいです。

 京都大学理学部宇宙物理学教室の教授だった宮本正太郎先生は、月の地殻構造に注目しました。そして、月面のクレーターは噴火により出来たと主張されたのです。今では、この説は否定され、クレーターは太陽系空間を運動している小さな天体が衝突して出来たと考えられています。こうして、月面のクレーターの仮面が2度に渡って剥がされたのでした。現在では、他の惑星にもクレーターが見つかり、また小惑星も衝突を繰り返していたことが分かり、結果として太陽系の総ての惑星は小天体の衝突の繰り返しによって成長したと考えられるようになったのです。



2004年10月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2004年10月の星空です。
頭の上から西側には夏の星座、東側には
秋の星座たちが輝いています。

天文カレンダー 惑星たち
6日: 下弦
8日: 寒露(太陽黄経195°)
14日: 新月.部分日食
21日: 上弦
23日: 霜降(太陽黄経210°)
26日: 十三夜(栗名月)
28日: 満月
水星: 5日に外合。観望不適
金星: 明け方の東空、観察好期
火星: 観望不適
木星: 観望不適
土星: 真夜中過ぎに昇ってくる

次回も、お楽しみに

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