天文セミナー 第86回

『金星のクレーター』『シーザーとアウグストゥス』



金星のクレーター

 今月の18日の早朝、金星が太陽の西側で太陽から最も離れ、観望の絶好期になります。その時の太陽からの離角は45.8度にも達し、いわゆる明けの明星として一際明るく光度もマイナス4.4等級。ところが、この金星の表面は厚いガスで覆われているため肉眼ではもとより望遠鏡を使っても可視光線では観測することができません。そこで、人工衛星を使ったレーダーによる観測が計画され、1962年から1973年にかけて実施されたのがマリナー計画、さらに1989年にはマゼラン計画が実施され、表面の状態が詳しく知られるようになりました。
 表面の様子が知られると、金星にも多数のクレーターや谷があることが分かり、これらに名前を付けようと言う提案が国際天文学連合で発議され、会員に名前の候補を募集したのでした。世界各地から多くの応募がありましたが、名前の制限は金星、つまりギリシャ神話ではアフロディティ、ローマ神話ではヴィーナスでいずれも美と愛の女神。そこで、女神や女性名が付けられることになったのです。

 金星の表面はヴェールを被せたような状態なので、つぶさには見ることはできませんが、ヴェールの下に隠された女神や有名な女性を偲ぶことはできるでしょう。そこで、日本に関わりのある名前を見てみると、クレーターには明治時代に雑誌「明星」を夫と共に創刊した与謝野晶子、さらに大国主命でおなじみで鳥取県に縁の「八上姫」、コロナと言われる場所には「弁天様」を見つけることができます。名前の募集があったとき、私も参加して「櫛稲田姫」とアイヌの女神「カムイフチ」を提案して採用されました。与謝野夫妻が創刊した「明星」誌の由来が金星。その表面にこれら日本に関係ある名前があるのだ、と思うのも楽しいものではないでしょうか。


シーザーとアウグストゥス

 「ブルータスよお前もか!」と、最後の言葉を残してBC43年3月15日に凶刃に倒れたのがローマで「終身の独宰者」の称号を使用したジュリアス・シーザー。そして最初の皇帝の座に就いたのがオクタビアヌスで後のアウグストゥス。アウグストゥスとは「尊厳者」を意味する言葉で当時のローマ元老院から贈られた称号なのでした。

(みなさんのカレンダーをよ〜く見てください)

 ところで、このジュリアス・シーザーが実施したのがユリウス暦と呼ばれる暦法で、現在の暦と同じ年初から始まる暦でBC46年のことでした。そして、奇数月は31日、偶数月は30日と決めて、以前から年末とされていた2月だけを29または30日とし、1年の長さを調整しました。そして、彼の誕生日7月13日を含む月である第5月(Quintilis)を、ジュリアスの月、すなわちJulyとしたのでした。これを見習ったのがジュリアス・シーザーから皇帝を引き継いだアウグストゥスでした。そして、彼も同じように8月をアウグストゥスの月Augustとし、それまで30日だったのを2月から1日減らし8月を31日にしてしまったのです。権力者、独裁者とは困ったものですね。ところで、それまでの月の呼び方は色々で、現在の2月が年末で3月が年初とされていたこともありましたが、シーザーによって現在の年初が決められたのです。ローマ神話を読むとヤヌス(Janus)という名前の神が出てきます。この神は、門を護ることが役目だったので顔が頭の両側にあり門の両側を監視していたそうです。この神が、年の初めの扉を開くと言うことから1月がJanuaryと呼ばれるようになったそうです。そう言えば、土星の第10衛星もヤヌスJanusですね。



2004年8月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2004年8月の星空です。

春の星座真っ盛りですが、東の空には
早くも夏の星たちが見え始めました。

天文カレンダー 惑星たち
1日: 満月
7日: 立秋
8日: 下弦
9日: 水星が留
16日: 新月
18日: 金星が西方最大離角
22日: 伝統的七夕
23日: 処暑、上弦
24日: 水星が太陽のこちら側
30日: 満月
水星: 24日に内合で観望不適
金星: 明け方の東空、18日に太陽から最も離れる(45.8度)
火星: 夕方の西空低い、観望不適
木星: 夕方の西空低い、観望不適
土星: 明け方の東空低い

次回も、お楽しみに

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