天文セミナー 第82回

『偽コロナ』『衆星共之(衆星これに向かうがごとし)』



偽コロナ

 皆既日食があると、大勢の人たちがその日食を観測しに、また観望しに出かけますね。今年はあいにく皆既日食は地球全域で起きません。ついでですが、金環日食も見られません。このように皆既も金環も起きない年は数年に一度くらいの割合で巡ってきます。
 それはさておき、皆既日食で最も見事な眺めは、なんと言っても黒い太陽(実際には太陽を覆い隠している月を見ているのですが)の周囲を取り巻くように見えるコロナでしょうね。太陽の活動状況によって、目玉焼きのように太陽の全周に殆ど等しい幅で広がるときと、両側に翼を広げたように見えるときがあります。そして、太陽に近い場所に見えるのが内部コロナ、外側に延びるのが外部コロナとそれぞれ呼ばれています。


内部コロナ(松尾 正恵さん撮影)

内部コロナの様子です。

 内部コロナは太陽に属していますが、外部コロナは太陽と地球の間に多数存在する細かい固体の塵が太陽の光を反射して見えていることが知られています。この外部コロナのことをFコロナ、もしくは偽コロナと呼ぶことがあります。
 さて、太陽系の内部空間には無数の小天体が惑星とともに軌道運動をしています。そしてそれらの仲間で最も小さいものが黄道光や対日照、そして外部コロナとなって見えているのです。結局、先月に登場した黄道光と対日照。夜空に仄かな光の帯として見える光の正体と同じものが原因で見えるのが外部コロナだったのです。


衆星共之(衆星これに向かうがごとし)

 子曰 為政以徳 譬如北辰 居其所 而衆星共之
 孔子の「論語」の為政第二篇の巻頭の一文で、政治を行うのに徳をもってすれば例え北辰が一箇所に留まっていても周りの星たちは総てこの方向を中心に回るようなものだ、と北天の日周運動を例に挙げて政治家を諭したのでしょう。
 イギリスの劇作家・ウイリアム・シェークスピアの有名な戯曲に「ジュリアス・シーザー」があります。この戯曲の、第三幕第一場、議事堂の前の場でシーザーは、「だが俺は北極星のように不動だ 天空にあって唯一動かざるあの星のようにな」と言います。


春の星空

動物の星座がたくさんあります。
北斗七星、どこにあるでしょう。

 ところで、北辰とは通常北極星を指すと考えられてきました。そして現在でもそのように思われ続けているのですが。
 春、4月になると、夜空はまるで大きな動物園のようになります。北極星のあるこぐま座、こぐまを見守るように巡るのはおおぐま座、そして大熊の足元にはこじし座を背負った大きなしし座。目を巡らすと、そのほかにりゅう座、りょうけん座、やまねこ座、かに座。南に目を転ずれば、背中にコップ座とからす座を乗せた海蛇座が長々と身を横たえます。これらの星々が、総て北辰、つまり天の北極を中心に一斉に回転し、まさしく衆星共之の状況ですね。ところが、孔子が活躍していたのは今からおよそ2500年前のBC500年頃と言われています。そして、ジュリアス・シーザーはBC43年に「ブルータスよ、お前もか!」と言う有名な言葉を残して凶刃に倒れました。
 ところで、天の北極が星座の間を移動することはBC150年頃ギリシャの天文学者ヒッパルコスが発見していました。歳差運動と呼ばれる現象の発見です。
 孔子が見た北辰には現在の北極星はなく、またシーザーが見た夜空にも北極星はありませんでした。結局、北辰は天の北極という空間の場所だったのです。しかし、夜空に目を向けると、現在も星たちが作る動物園が孔子やシーザーの時代と変わることなく天の一点の北極を中心に西に向かって一斉に駆け続けているのです。



2004年4月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2004年4月の星空です。

いつの間にか冬の星たちが西寄りに移動し
春の星たちがたくさん見られるようになってきました。

天文カレンダー 惑星たち
4日: 清明
5日: 満月
7日: 水星が留
12日: 下弦
17日: 水星が太陽のこちら側
19日: 新月、部分日食(日本では見えない)
20日: 穀雨
28日: 上弦
29日: 水星が留
水星: 上旬に夕方の空で観望の好期
金星: 夕方の西空で観望の好期
火星: 夜半前に沈む
木星: 観望の好期
土星: 夕方に南中、夜半に沈む

次回も、お楽しみに

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