天文セミナー 第79回

『光陰矢(箭)の如し』『円錐曲線』



光陰矢(箭)の如し

 月日が経つのは、弓を離れた矢が飛んで行くように速いものだ、という例えですね。少年時代には中々時間が経過しなかったにもかかわらず、年を重ねるに従ってそれこそ「アッ」と言う間に時間が過ぎ去って行きます。
 この天文セミナーも早いもので今月で79回を数えることになりました。まさに、光陰矢の如し。昨年の9月と10月に書きましたが、東京天文台堂平観測所が整備され、レーザー光線を使って月までの距離を正確に求めようとしていた頃の話です。堂平観測所は、標高875mの山頂にありました。そこは眼下には関東平野が広がり、国土地理院が管理する一等三角点があります。遠くには、常総筑波の山並みが、東北には日光の男体山、そして北には時折噴煙をあげる浅間山が指呼の間に見渡せます。


堂平観測所に設置されていた月レーザー測距システム

大きいパラボラは直径3.6mの受信用金属鏡。
手前が発射用の望遠鏡。

 ここで天文の通常観測と同時に行われていたのがレーザーによる月や人工衛星の観測でした。レーザー光線は高エネルギーのため、発射するときには観測所の屋上に設置されている赤色の灯火が点灯され回転し注意を喚起するのです。回転灯が点灯されしばらくするとレーザー発射用の望遠鏡から赤い色の光が飛び出します。ルビーの励起を応用したルビーレーザーが使用されていたのです。そして、その光線は極度に短い時間だけ発射されるために一見、赤い光の矢が中天に向かって飛び出して行くように見えるのです。この光の矢を見ながら「光速って意外に遅いものだなー」と感じたこともありました。勿論、秒速30万kmで飛び出すのですから実際の光が飛び去るのが見えたわけではありません。肉眼の残像が見せる虚像に過ぎないのですが。光陰矢の如しですね。


円錐曲線

 平面状の真円の円周の総てから、同じ平面にない等距離の一点を結んでできる立体のことを真円錐と言いますね。この円錐を切ったときにできる切り口の曲線を円錐曲線と言います。平面に併行に切ると円、斜めに切ると楕円、円錐の中心線に併行に平面まで切ると双曲線、そして円錐の側面に平行に切ると放物面になりますね。
 太陽系の惑星の軌道を求めるための法則は、ケプラーの法則と呼ばれていて3つの公式で成り立っています。そしてその法則の最初が、惑星は太陽を焦点とする楕円上を運動すると言うものです。さて、それでは実際に惑星たちは楕円形の軌道を運行しているのでしょうか。楕円には、2個の焦点がありますね。この焦点のうちの1個に太陽があるのです。したがって、惑星たちが軌道上を運行するときの太陽からの距離は絶えず変化しています。



太陽のまわりを回る地球

 例えば、地球が今年太陽に最も近くなるのは1月5日03時で、その時の太陽からの距離は1億4710万km、そして最も遠くなるのは7月5日20時で1億5210万km。500万kmも変化するのですね。距離が変われば、見掛けの大きさも変わります。最も近い1月上旬は32分32秒角ですが、最も遠い7月上旬には31分28秒角にまで変化するのです。
 今年は残念ながら日本では皆既日食は見られませんが、年末年始の頃見える日食には金環食が多く、7月頃に見える日食は皆既が多いことの理由の1つなのです。




2004年1月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2004年1月の星空です。

冬の星たちで、東の空がにぎやかです。
土星がふたご座にあり、見ごろを迎えています。

天文カレンダー 惑星たち
1日: 土星が太陽の反対側
4日: 木星が留
5日: 地球が太陽に最も近い
 6日: 小寒、水星が留
8日: 満月
15日: 下弦
17日: 水星が太陽の西側で最も離れる
21日: 大寒
22日: 新月
29日: 上弦
水星: 明け方の東空、17日に西方最大離角(23度55分)
金星: 夕方の西空
火星: 夜半前に沈む、光度は0.2等→0.7等まで暗くなる
木星: 夜半に上る。しし座。
土星: 観望の好期。一晩中見える。

次回も、お楽しみに

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