天文セミナー 第78回

『彗星の数と質量は』『光と闇』



彗星の数と質量は

 今年も国際天文学連合小惑星中央局から彗星のカタログが発行されました。1972年に初版が発行されてから15版目にあたります。このカタログを読む
と、2358個の彗星に対して2397個の軌道が計算で求められていて、その内の274個が短周期の彗星、残りは周期200年以上の長周期彗星というわけです。そして、1996年代に入ると人工天体による発見数が急激に増加し、彗星捜索者の成果が減少しているかのような印象を受けます。
 彗星捜索者の目に触れるような明るい彗星は、もう無いのではないか?という危惧の言葉が語られ始めたのもちょうどこの頃のことでした。人工天体の目、と言っても全天をくまなく捜査しているわけではないので必ず盲点があるはず、と言って捜索を続行した成果がスナイダー・村上彗星や、宇都宮彗星、池谷・張彗星、そして工藤・藤川彗星だったのです。


池谷・張彗星


 彗星の故郷と呼ばれるのがオールトの彗星雲とエッジワース・カイパー・ベルト。オールトの雲は太陽系の外殻部として太陽系誕生の時の記憶を保持し、エッジワース・カイパー・ベルトは太陽系の内部の生成に関わりがあるとされています。
 そして、これらの総数はどれ位になるのでしょうか。多くの太陽系研究者が持つ疑問です。彗星を研究する過程で、多くの場合彗星の質量を0として計算を始めます。そして、殆どの場合にはこれで十分なのです。彗星の総数の推定はどうも不可能のようですが、全質量を推定してみるとき、小惑星の全質量が参考になるでしょう。そして、小惑星の全質量は月の数分の一と見積もられています。どうやら彗星の全質量は、この数値より大きくはないことになりますね。


光と闇

 環境省が主導している今年度の冬のスターウオッチングは、2004年1月11日から24日。全国各地の参加団体が寒い冬空の下で肉眼で「すばる」を見、アルデバランを写真に収める努力をしてくださることでしょう。このスターウオッチングも、15年が経過し、多くのことが判明してきました。そして、その事実を踏まえて照明器具と照明方法が議論され、「光害対策ガイドライン」などとして環境省から発表されました。一方、照明関係の会社も「適正な照明器具の開発」に力を注ぎ、ついにガイドラインをクリアするような器具が開発され供給され始めました。光の適正な使用であり、光と闇の共生です。



大浦天主堂

 ヨーロッパの古い教会に行ったときのことです。日本の明るい照明に慣れ親しんだ目には、とても暗い、そして陰気な雰囲気に驚かされました。教会は建物の西側に入口があり、礼拝者はここから東に向かって入ります。すると、正面、すなわち東の壁にはステンドグラスに描かれたイエス・キリストの像があり、礼拝は東を向いて行われます。
 朝。礼拝が始まる頃には、東から上ってきた太陽がステンドグラスのキリスト像を照らします。光の子・イエス・キリストが再現するのです。左右を見回すと、そこは光の乏しい暗闇に近い空間。光と闇が完全に共存していました。教会の建物の壁に開いた窓。鉄格子が嵌められていれば牢獄と勘違いしそうなまでに小さい明り取り。
 わが国の神社仏閣に目を向けると、そこは外界と遮断された空間があります。寺院では本尊様は御簾の中。秘仏とされた仏は、暗闇の中(らしい)。しかし、そこにも光と闇の織り成す絶妙な陰翳があります。光と闇を上手に共生させる手段を教えるのが教会や神社仏閣などと共に星との付き合いではないでしょうか。




2003年12月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2003年12月の星空です。

秋の四辺形が頭の真上あたりに見えます.
火星は少しかがやきが弱くなってきました。

天文カレンダー 惑星たち
1日: 上弦
7日: 大雪(太陽黄経255度)
9日: 満月、水星が太陽の東側で最大離角
 17日: 下弦、水星が留
22日: 冬至(太陽黄経270度)
24日: 新月
27日: 水星が太陽のこちら側
30日: 上弦
水星: 夕方の西空、9日太陽の東側で最大離角(20.94度)
金星: 夕方の西空、次第に高度が高くなる
火星: 夕方に南中、夜半に沈む
木星: 明け方に南中、観望の好期が近づく
土星: 一晩中見える、観望の絶好期。

次回も、お楽しみに

天文セミナーに戻る