天文セミナー 第73回

『掩蔽(えんぺい)観測と天王星の環』『太陽の大きさ』



掩蔽(えんぺい)観測と天王星の環

 1977年3月10日、当時の東京天文台堂平観測所の36インチ反射望遠鏡は天王星をその視野に捕らえていました。これは、1973年にグリニッジ天文台のG.テイラーがてんびん座にあるSAO158687という8.8等星を隠すという現象(掩蔽、星食)が起きるだろうと予報していたので、その現象を観測しようとしていたわけです。惑星が恒星を隠すと食が起こりますがその食の継続時間を解析することによって、その惑星の直径を求めることができます。予報によると、この掩蔽現象はインド洋の南半で、しかも南極大陸以外の陸地では殆ど観測されないことが分かりました。NASAでは、望遠鏡を積み込んだ飛行機、カイパー航空天文台で観測を行う予定にし、さらに南アフリカのケープタウン天文台、インド洋のモーリシャス、インドのカバリ、オーストラリアのパース天文台などが観測に参加しました。日本では掩蔽は見られないだろうとの予報でしたが、一応観測体制だけは整えて予報時刻が来るのを待っていたのでした。


天王星の環(提供:NASA/JPL)

ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した天王星です。
何本か環があるのがわかります。

 さて、このカイパー航空天文台では予報時刻の35分前になって、恒星の光度が減少しました。そして結局5回の減光が観測され、天王星本体の食が終わった後にもこの現象が逆の順番で観測されたのでした。この現象は、他の観測所でも観測され、東京天文台堂平観測所の記録計にも微かながら現れていました。各地の観測所の観測結果は、観測者の頭を悩ませましたが結論として、天王星にも土星と同じように環があるとすればこの現象が説明できると言うことになりました。天王星にも5個の環があることが発見されたのでした。そして、現在では11本の環があることが確認されています。それまでは、土星特有のものと考えられていた環が天王星にも発見され、引き続いて木星と海王星にも環があることが知られました。太陽系の9惑星の内、木星より外側を回るものは環があり、内側を回るものには環がありません。どうやら、惑星の成長過程に問題があるのでしょうか。天王星の環の発見物語でした。


太陽の大きさ

 何をいまさら太陽の大きさなどと・・・、言わないでください。理科年表によると、太陽の赤道半径は69万6000km、地球の赤道半径6378kmのおよそ109倍の大きさがあります。その太陽の重心を焦点に地球は楕円の軌道を移動して行きます。軌道が楕円なので、当然ながら太陽に近づいたり遠ざかったりしますね。そうです。そして、最も太陽に近づくのは毎年の年の初めで今年は1月4日14時でした。そして、太陽から最も離れるのが7月の上旬。今年は7月4日15時なのです。


太陽と地球の大きさ比べ

「109倍」といわれても、なかなかピンときませんね。
身のまわりのものでも確かめてみましょう。
(例えば、相撲の土俵は4メートル55センチ。
これを太陽としますと、地球の大きさは
ピンポン玉ぐらいになります)

 さて、太陽の見かけの大きさを角度で表すとき、その半径は地球から1天文単位の距離で15分59.64秒。そして、この値は太陽の距離によってかなり変化します。すなわち、太陽が最も近い1月4日頃は16分17.5秒、最も遠い7月上旬には15分45.4秒になります。わずかな差と思うでしょうが、実はこの差も原因の1つで日食が皆既になったり、金環になったりします。太陽が近い冬の日食は皆既時間の短い皆既または金環食に、太陽が遠い夏の日食は皆既時間が長い日食が見える確率が高くなるのです。
 今年の11月23日に南極大陸で見られる日食は継続時間2分の皆既日食ですが、2009年7月22日に日本近辺で見られる日食は継続時間6.7分の長い皆既日食になるのです。太陽の見かけの大きさが0.5分角違うだけで皆既と金環の差を生じるのです。




2003年7月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2003年7月の星空です。

さそり座がちょうど見頃です。
東の空には、夏の大三角もよく見えるようになりました。

天文カレンダー 惑星たち
4日: 地球が遠日点通過(1億5210万km)
5日: 水星が太陽の向こう側
7日: 小暑(太陽黄経105度)、上弦
 14日: 満月
21日: 下弦
23日: 大暑(太陽黄経120度)
29日: 新月
31日: 火星が留
水星: 夕方の西空低い
金星: 明け方の東天低い。
火星: 夜半前に上る、観望の好期
木星: 夕方の西空、低くなる
土星: 太陽に近い

次回も、お楽しみに

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