天文セミナー 第70回

『花祭りと復活祭』『地球を測る人工衛星』



花祭りと復活祭

 春4月。野山も新芽に色づき始め、霞のたなびく田園地帯では農作業の準備が始まろうとしています。天上天下を指差して「天上天下唯我独尊」と叫んだされるお釈迦様。このお釈迦様の誕生を祝うのが4月8日の「花祭り」。大勢の稚児による稚児行列がお寺の境内を進みます。境内には、お釈迦様の像に甘茶が注がれ、家内安全などが祈願されます。
 この、花祭りの日付は4月8日と決められているため、なんらトラブルは起こりませんが、キリスト教の主要な行事「復活祭」の日付は移動するので厄介です。具体的には、キリスト教で使用する教会暦が使われるのですが、目安として「春分の次の満月の次の日曜日」と覚えていて大きな間違いはありません。今年の春分は3月21日、次の満月は4月17日、次の日曜日は4月20日。したがって、今年の復活祭は4月20日と言うことになります。ちなみに、1991年から2010年の間で最も早い復活祭は2008年の3月23日、最も遅いのは2011年の4月24日。1ヶ月もの範囲で前後に移動します。復活祭の日付を決めるのも大変ですね。


稚児行列

慣れない衣装に、ちょっと一苦労

 ところで、冬至の日後に続くのが「クリスマス」、そして春分の日の後で「復活祭」。キリストの誕生とその復活を祝っての行事が、どちらも太陽の動きに関係していて一陽来復。世界の暦の歴史を見るとき、クリスマスも春分も「年初」に当てられていた時期があるのです。どうやら、クリスマスも復活祭も、人為的に決められたという背景が見え隠れするようですね。


地球を測る人工衛星

 1958年春。年初めに打ち上げられたアメリカの人工衛星エクスプローラも順調に飛行を続けていましたが、軌道を詳しく知るにはどうしても精度の高い観測が必要です。そこでアメリカのスミソニアン天文台ではベーカー・ナン・シュミットカメラを開発して、世界の主要な天文台に貸し出しました。その内の1台が東京天文台に割り当てられ、1958年の春に三鷹の東京天文台に到着しました。このカメラは、特殊な光学系と架台、さらに高精度の時計を備えていて、天球を高速で移動する人工衛星を高精度で観測できるものでした。
 観測機器が高精度になっても、星を基準に決められる位置の値は使われる星図や星表の精度で決まります。星の位置は、世界各地の天文台で独自に観測した位置が発表されていましたが、精度などがマチマチで、広い空を移動する人工衛星の位置を決めるためにはとても不便でした。そこで、スミソニアン天文台では、世界各地の天文台が発表した位置の精度を統一する試みを始めたのです。その成果が、やがてスミソニアン天文台星表として公表されたのです。全天を共通の規格で統一した、これまでにない画期的な星表で、世界の天文台でこぞって使用され始めたのでした。


ベーカー・ナン・シュミットカメラ

国立天文台(旧東京天文台)の
堂平観測所に設置されていたものです


水晶の原石

 そして、時刻の精度も、それまでの水晶時計の精度をさらに向上させたものが出現し、さらに原子の振動を利用した原子時計が発明されるに及んで、その精度は飛躍的に向上したのです。こうして、位置の精度、時刻の制度ともに向上し、ついに地球の形が求められるようになりました。そして、現在では地球は3軸不等の回転楕円体で、重心は中心に一致していないことが知られています。




2003年4月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2003年4月の星空です。

そろそろ土星が見納めです。

天文カレンダー 惑星たち
2日: 新月
4日: 木星が留
5日: 清明(太陽黄経15度)
10日: 上弦
16日: 水星が太陽の東側で最大離角
17日: 満月
20日: 穀雨(太陽黄経30度)
23日: 下弦
27日 水星が留
水星: 夕方の西空、16日に最大離角
金星: 明け方の東空低い
火星: 夜半過ぎに上る
木星: 夕方真南。夜半過ぎに沈む
土星: 夕方の西空。夜半前に沈む

次回も、お楽しみに

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