天文セミナー 第61回

『電波星さそりX-1』『大陸移動』



電波星さそりX-1

  昨年から、このセミナーも佐治天文台のホームページに移動しましたが、相変わらずの私のおしゃべり。ついに6年目になりました。今後も、宜しくお願いします。
 ところで、1966年11月1日発行の、国際天文学連合の回報1980番が私の手元にあります。この回報によると、アメリカ・ミネソタ大学のルイテンが、さそり座に見つかっていたX線源の光学観測による同定が成功した報告しています。X線源とはX線星とかX線天体と呼ばれていた天体で、1962年7月にジャコーニとロッシによって人工衛星に積まれた観測機で発見されていましたが、光学観測では確認されていませんでした。
 1966年3月、当時の東京大学宇宙航空研究所では全天で最も強いX線源のあるさそり座を観測しようとアメリカの人工衛星に検出器を搭載し打ち上げて観測しました。この観測結果は1965年に鹿児島県内之浦の東大の実験場から打ち上げたロケットの観測とも一致したのです。この結果を元に東京天文台にたいし光学観測を要請して来たのです。東京天文台岡山天体物理観測所では、早速この天体の検出のための観測を始め1966年6月17日、梅雨の晴れ間のわずかな時間に188cm望遠鏡で観測しました。そして、Xが強く出されていると思われる青色の強い天体を発見したのでした。この発見は世界最初の成果で、現在Sco?X1と呼ばれる天体です。

さそり座
星占いでおなじみのさそり座
天の川に近いため、
複雑に入り組んだ星雲の模様が印象的です。

 この天体は、短い周期で明るさが変わるのではないかと想像され、私もこの星の明るさの変化を写真で追跡したことがありました。最新の理科年表によりますと、この天体の位置は赤経:16時19.9分、赤緯:南15度38.4分にあって、低質量の中性子星が連星系を作り0.79日の周期で回転するために明るさが変わる、とされています。さそり座を見るたびに思い出す記憶でした。


大陸移動

  世界地図を見ると、南アメリカの東海岸とアフリカの西海岸の海岸線の形がとてもよく似ていることに気づくでしょう。この形がよく似ていることから、ドイツの気象学者・ウェゲナーは20世紀の始めに大陸は昔から同じ場所にあったのではなく、お互いに移動していると言い出しました。現在、大陸移動説と呼ばれている考えの始まりでした。ところが、この説を支持するような証拠が見つからず、1950年代になってしまいました。当時は、まだ月の運動に関する詳しい理論が未完成で、観測地の位置も高い精度では決まっていませんでした。そこで、この研究を完成させようと恒星が月に隠される現象、星食の観測が世界中で広く行われていました。

世界地図

大西洋をはさんだ左右の地形が、
大陸移動を雄弁に語っています。

  1957年10月4日、突然当時のソ連は人工衛星スプートニクの打ち上げに成功し、アメリカは翌年エキスプローラーを打ち上げました。こうして、人工衛星による宇宙時代が開幕しました。1960年代になると、大きな風船型の人工衛星が打ち上げられ、小型の望遠鏡でも写真観測が可能になりました。この衛星に注目したのが、当時の東京天文台。アメリカから贈られたベーカー・ナン式のシュミット望遠鏡を使って人工衛星を観測していたのですが、この衛星を観測して大陸移動を確認しようとソ連に協同観測を申し入れました。こうして、日ソ協同観測が始まったのです。やがて、現在カーナビなどでお馴染みのGPS、全地球測位システムをアメリカが開発し試験運用がはじまりました。このGPSによると、今まで考えられていた精度より数段高い精度で位置が求まることが分かり、ついに人工衛星の位置観測から大陸移動説を検証する研究のプログラムは終了しました。
 地震観測になどに威力を発揮しているお馴染みのGPS。大陸移動も検証しています。



2002年7月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2002年7月の星空です。

惑星は金星だけとなりました。
梅雨が明けたら、空は夏の星たちでいっぱいです。

天文カレンダー 惑星たち
3日: 下弦
6日: 地球が太陽から最も遠い
7日: 小暑
10日: 新月
17日: 上弦
20日 木星が太陽の方向(合)
21日: 水星が太陽の向こう側
23日 大暑
24日: 満月
水星: 明け方の東の空
金星: 宵の明星
火星: 夕方の西空低い
木星: 太陽の方向で見えない
土星: 日の出前に昇る

次回も、お楽しみに

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