天文セミナー 第60回

『金環日食』『五月雨と夏至』



金環日食

 毎日お世話になるのがカレンダー。このカレンダーには、何曜日かを示す曜日が記載されています。数えて見るまでもなく日、月、火、水、木、金、土の七日毎の繰り返しです。この曜日は言うまでもなく、太古の昔から慣れ親しんできた太陽と月、そして5個の惑星たちが当てられています。これが七曜。そしてこの七曜に羅喉(らご)と計都(けと)の二つを加えて九曜と呼ばれていることはご存知でしょうか。
 昔は、日食や月食は悪魔によって太陽や月がむしばまれるからだと考えられていました。そして、長い間「蝕(むしばむ)」という字が使われました。この悪魔こそ、羅喉と計都だったのです。
 さて、今月11日には南の島、サイパン島の隣のテニアン島で金環日食が見られます。
地球は太陽の周りの楕円の軌道を運動しています。楕円ですから、当然太陽までの距離は変わります。太陽に最も近づくのは毎年1月初旬、そして最も遠ざかるのは毎年7月上旬の頃です。距離が近いと相手が大きく見え、遠いと小さく見えますね。そうです。太陽の見かけの大きさは1月が最も大きく、7月が最も小さくなるのです。

金環日食の仕組み
地球と月または地球と太陽の距離によって、
金環日食となります。

 さらに、月も地球の周りの楕円形の軌道を運動していますので、見かけの大きさも変わります。この2つの天体の距離の差が、見かけの大きさの変化となって皆既や金環の日食を起こすのです。大雑把なことを言いますと、7月前後に起きる日食は皆既食が多く、1月前後の日食は金環食が多いことになります。ところが、今月の日食は金環食です。詳しく調べると、日食の中心では太陽の99%が隠されるのです。もしかすると、太陽の縁から噴出すようにプロミネンスが見えるかもしれませんね。


五月雨と夏至

   五月雨を 集めて早し 最上川     松尾芭蕉
 先月登場した北斗七星も、北極星の上を通り過ぎて斗が大きく下向きになってしまいました。北斗によって汲み上げられた水が斗からこぼれ出す梅雨の到来です。ところで、松尾芭蕉のこの句は旧暦の五月で、太陽暦では6月。そして、五月雨とは梅雨の雨のこと。その雨を集めて急流になった最上川の情景です。
 日本などのように、梅雨のある地域ではこの雨の恵みを受けて米作農業が発達しました。毎日、どんよりとした雨模様の日が続きます。気も滅入って来るというものです。しかしこの雨が地上のほこりを洗い流した後の晴天。まぶしいほどの陽の光が燦燦と降り注ぎ、夜になると満天の星空が頭上を覆います。 梅雨の晴れ間。ほんのひと時かも知れませんが、雨雲の晴れ間から見える星の大きいことに驚かされます。今年の夏至は6月21日。

球状星団 M13

ヘルクレス座にある球状星団 M13 です。
梅雨の晴れ間に見るその姿は、
まさに「北天一美しい球状星団」の評判どおりです。

  ところで、ヨーロッパなどには梅雨はありません。特に北欧では、燦燦と降り注ぐ日光を全身に受け、太陽を満喫します。そして、夏至祭。森の中では、ロビンフッドや妖精たちが思う存分動き回ります。日本とヨーロッパの森を比べると、面白いことに気づきます。日本の森は尾根続きで、尾根を下ると谷川に出ます。谷川を下っていくと必ず人家があります。つまり、森は川に向かって下るようになっているのです。ところが、ヨーロッパの森はほぼ平坦で、わずかな上下が続きます。一度迷うと、大変です。森の外に出られなくなる心配があるのです。
 シェイクスピアの喜劇に、「夏の夜の夢」があります。この芝居は、夏至祭を念頭に書かれたと言われていますが、星座や月を背景に妖精たちを交えて森の中で進行するのです。「新月から三日たった夜。必中の矢が狙うのは、西方の玉座につかれている美しい女王だったのだ」と、おとめ座を指し示すのです。



2002年6月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2002年6月の星空です。

15日頃には、惑星たちに加えて
月が西の空に見えます。
星空はすっかり春の星座たちとなりました。

天文カレンダー 惑星たち
3日: 下弦
6日: 芒種
8日: 水星が留
9日: 土星が太陽の方向
11日: 新月、日食(テニアン島で金環食)
21日 夏至、水星が太陽の西側で最も離れる
25日: 満月
水星: 明け方の東の空
金星: 宵の明星
火星: 夕方の西空低い
木星: 夜半前に沈む
土星: 太陽の方向、見えない

次回も、お楽しみに

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