天文セミナー 第57回

『3月3日ひな祭り』『佐治天文台の写真』



3月3日ひな祭り

 草の戸も 住み替わる代ぞ 雛の家    松尾芭蕉
 雛あらば 娘あらばと 思いけり     正岡子規
 雛見るや 一人座りて 燭の下      長谷川かな女

 梅の花も満開。女の子にとって最も楽しい行事の一つ「ひな祭り」がやってきました。 古代の中国から伝わった行事で、奇数月の奇数日に行われる五節句の一つです。 一月七日を別にして、三月三日の「ひな祭り」、五月五日の「端午の節句」、七 月七日の「七夕」、そして九月九日の「重陽の節句」。これらは、いずれも旧暦 で行われる行事です。  旧暦、つまり太陰太陽暦で行われるこれらの行事には、すべて月が関わりま す。三月三日の夕べには三日月、五月五日の夕べには五日月、七夕には七日月、 そして重陽の節句の夜空には九日月が懸かります。


流しびな行事

鳥取県用瀬(もちがせ)町では、今も旧暦3月3日に、
流しびな行事をおこなっています。
詳しくは、用瀬町商工会のホームページをご覧ください。

 三月三日。雛飾りを囲んで楽しい遊びに興じる女の子。夕方になるのも忘れ果てていることでしょう。気が付くと、夕空に三日月が懸かり、地上は薄暗がりの世界が広がります。三日月。ひな祭りに祭られるお白酒。その白酒を受ける杯と見立てるのは無理でしょうか。
 雛人形。女の子の無病息災と成長を祈念して、災いを人形(ひとがた)に託して流し去るという意味を込めて行われ始めた行事の一つと言われます。「流し雛」の行事が各地で行われている所以です。鳥取県八頭郡用瀬町に古くから伝わる「流し雛」の行事。今年も旧暦の三月三日に多くの参加者を得て盛大に行われることでしょう。


佐治天文台の天体写真

 佐治天文台の2階には、大きなカラーの天体写真が掛けられ、来館者の目を引きます。散光星雲、散開星団、銀河などで、星の一生を展開したものです。透明なフイルムにプリントされ、背後から照明されているため壁面に浮き上がって見えます。
 1974年に開設された東京大学木曽観測所。ここに設置されているのは、シュミットカメラという特殊な光学系の望遠鏡です。口径はシュミットカメラとしては世界第4位の105cm、広い星野と明るい光学系を持ち、短時間に広い星野を一度に写真撮影できるのです。当時、わが国で使われていた理科の教科書では、ほとんど外国の大望遠鏡で撮影された天体写真が掲載され、児童・生徒の教育に使われていました。私は、東京天文台の夜間公開の日に訪れてきた小学生の「俺の図鑑の写真の方が良いや!」と言う言葉に強いショックを感じていました。そこで、木曽観測所の望遠鏡でカラーによる天体写真の撮影を計画したのです。幸い、国産でISO1600と言う高感度のカラーフイルムが市販されたのでした。この会社に相談を持ちかけ、共同研究としてこのフイルムを望遠鏡で使用できるサイズで提供して下さるようにお願いしました。快く引き受けていただき、シュミット望遠鏡でカラー写真を撮影することができたのです。現在、教科書などで見る天体写真の中の幾つかは、この共同研究で得られた成果なのです。

佐治天文台ロビーにある天体写真の展示

すばる、オリオン大星雲、アンドロメダ銀河など、
おなじみの天体が迫力ある大パネルで展示されています。

 写真。特に天文などの科学分野で活躍しています。極端に明るい対象を撮影したとき、写真が反転することがあり、ソラリゼーションと呼ばれています。ソル、とは太陽のこと。写真術が発明されて間もないころ、天文学者が太陽の写真撮影に挑戦していました。ところが、太陽の像が反転してしまったのです。極端に明るい太陽の像が反転したので、これ以来ソラリゼーションと呼ばれるようになったのです。天文の観測と写真術。車の両輪のような関係を続けながら発展して来たのです。



2002年3月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2002年3月の星空です。

木星・土星がそろそろ好機を過ぎてしまいます
お早めにご覧ください。

天文カレンダー 惑星たち
6日: 啓蟄、下弦
14日: 新月
21日: 春分
22日 上弦
24日: 木星が留
29日: 満月
水星: 明け方の東天低い
金星: 夕方の西南西
火星: 21時過ぎに沈む
木星: 夕方南中、夜半過ぎに沈む
土星: 夜半に沈む

次回も、お楽しみに

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