天文セミナー 第54回

『ふたご座流星群』『冬至』



ふたご座流星群

 毎年、安定した出現を見せてくれるのがこの「ふたご座流星群」です。私が、東京天文台に在職中、ほとんど毎年この流星群の観測をしていました。12月。ふたご座は夕方に東の空に上ります。したがって、ほぼ一晩中観測ができるのです。そして、毎年多くの流星を見せてくれます。今年はどうでしょうね。
 1983年の11月11日。当時の東京天文台に一通の電報が届きました。国際天文学連合(IAU)の天文電報中央局から発信されたものでした。当時は、新しい天文の情報は世界各国の主要な天文台に宛てて、特別な暗号による電報で知らされていました。私は、こういった情報を授受する部局にいましたので、この電報を最初に見ることができました。
 電文には、とても変わった軌道を運動している小さい天体を、赤外線観測衛星(IRAS)が発見したことが記されていました。しばらくして、アメリカのハーバード天文台のホイップル博士が、この天体の軌道は「ふたご座流星群」の軌道にとてもよく似ていることに気づき、そのことを天文電報で世界各地の主要な天文台に知らせたのです。


ふたご座

星占いに出てくるふたご座は、仲のいい兄弟の姿に描かれています。

 世界中の天文学者、特に太陽系の成り立ちに強い興味を持っていた人たちは挙って観測をしたのです。発見された小天体は「1983TB」と仮の名前がつけて呼ばれることになったのでした。観測された像は、彗星とはかけ離れた一点の像です。これまで、流星群の流星は彗星が軌道にこぼしてきた小さい塵が、地球に衝突して起きる現象と言われていたのでしたが、今度の1983TBは彗星状の像ではないのです。観測が続けられ、多くのデータが集まると、次第に素性が分かってきました。この1983TBは、永年の間、太陽を回る軌道を運動している間に、彗星の特徴がなくなり、ついに一個の小さい個体になったのだろうと考えられるようになりました。
 こうして、彗星のなれの果てが1983TBであること、そしてこの1983
TBが彗星だった頃に軌道に残した塵がふたご座の流星群となって見られているのだということが分かったのです。現在、この小天体は小惑星3200番パエトンとして登録されています。最近、数多く発見されている地球に近づく小天体の中にも、彗星のなれの果ての天体が含まれているだろうことも分かったのです。流星群と彗星、彗星のなれの果てと地球に接近する天体。太陽系にはまだまだ多くの謎があるのです。


星空の中を移動している小惑星3200 Phaethon(パエトン)

星空の同じ場所を、少し時間を空けて2回撮影すると、
小惑星が移動している様子がわかります。
2枚の写真を少し横にずらして重ねてみると、矢印の先の星(パエトン)だけ、
他の星に比べて違う方向に動いている様子が良くわかります。

冬至

 今月の22日は冬至ですね。カボチャを食べると風邪を引かないと言い伝えられています。これはきっと、カボチャに多く含まれるカロチンが、有効に作用するからなのかも知れませんね。端午の節句の菖蒲湯と同じ感じなのでしょう。
 ところで、冬至というと誰でも1年中で昼間がもっとも短い日、と応えます。何故でしょう。この日の太陽は、太陽の通り道、黄道のもっとも南にあります。南の星たちが、あまり長く見えないのと同じように、地平線の上に見える時間が短いからなのです。

日時計の影の変化

影の長さが季節によって変わっている様子がよくわかります。

 私は、去年の10月頃と今年の6月に、南アフリカへ行って来ました。6月
は、北半球では丁度夏至の頃でした。南半球では、その反対。太陽はもっとも北にありました。北の空の低いところを太陽は右から左へと時間と共に移動します。地球の自転が逆さまになったのではないかと一瞬錯覚を起こします。昔の人は太陽の影の長さを測って、冬至を決めました。何故、他の季節より冬の方が良かったのでしょう。太陽が低いと、物の影は長くなりますね。そうです。影の長さの変化がとてもよく分かるからだったのです。
 太陽が真南に来る頃、物の影の長さを測って実験してみるのも楽しいことでしょう。



2001年12月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2001年12月の星空です。

東の空には、木星と土星が見え始めました。

これからが観望好期です。

天文カレンダー 惑星たち
1日: 満月
3日: 土星が太陽の反対側
5日: 水星が太陽の向こう側
7日: 大雪(太陽黄経255度)
8日 下弦
14日: ふたご座流星群が極大
15日: 新月
22日: 冬至(太陽黄経270度)
23日: 上弦
30日: 満月
水星: 太陽の方向で見えない
金星: 明け方の空低い
火星: 21時ころに沈む
木星: 夜半過ぎに南中
土星: 夜半に南中

次回も、お楽しみに

天文セミナーに戻る