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天文セミナー第215回(2015年5月)「星の風土記」14.南方の国の物語2(南方宿(朱雀))

天文セミナー 第215回

『星の風土記』



14.南方の国の物語2(南方宿(朱雀))

 今回の星宿は22番目の「井(せい)」宿で現在の星座に当てはめると「ふたご座」。

井とは当然ながら井戸のこと。ふたご座のγ、ν、ζと36番星で作る四角形がちょうど井戸の井の形に似ているので「井宿」とされたのかも知れません。中国の古典に「井星は参(オリオン)の東にあり、故に東井と称す」との記載があるそうです。この「井」宿は、ふたご座の足に相当する場所で、天の川に半分埋もれていて中々確認は困難です。当時の人には、十分確認できたのでしょうか。

 この、ふたご座の2つの1等星は北河(ホクカ)と呼び、黄河最北端の河の流れを別けて南河、北河としたそうです。古く、匈奴が活躍した北方の地を東に流れる黄河は南北に分かれて東に流れますが分かれた流れの北の部分を北河、南に流れる部分を南河と呼び、この流れに天の川を例えて呼んだのではないでしょうか。

 この「ふたご座」に付いてのギリシャ神話は、佐治天文台のプラネタリュームでお馴染みのはず。そこで、今回はキリスト教の聖書などに見える話題です。

 ふたご座の双子、カストルとポルックスは航海の守護神として地中海沿岸で崇められていました。新約聖書の「使徒行伝(使徒言行録)」には、晩年の使徒パウロが捕らえられてローマへ護送される最後の旅の途中、船が難船して地中海のマルタ島に漂着し、3ヶ月をマルタ島で過ごしてから目的地のローマに向かった時に乗った船について書かれています。それは、「使徒行伝」第28章11節で「・・・わたしたちは、この島に冬ごもりをしていたデオスクリの船飾りのあるアレキサンドリアの船で出航した」と記載されています。デオスクリは、この双子のデオスクロイのことで、カストルとポルックスを指します。

ローマ時代の地中海には、このカストルとポルックスの像を船首に飾った船が多かったことが分かるのです。

 ところで、皆さんはセント・エルモの火と言う現象をご存じでしょうか。船の帆柱や船首のように尖った棒状の物の先端から放電する自然現象で、海上の船に限らず高い山岳地帯でも多く見られます。昼間はこの放電による火は見えず音だけが聞こえることもあります。セント・エルモの火の名前は地中海の船乗り達の守護神の名前に由来すると言われていて、この火が現れるとカストルとポルックスの名前を唱えたと伝えられています。これも、航海の守護神として崇められたことの現れでしょう。

 さて、皆さんは南の空にかつて「アルゴ座」と言う名前の巨大な星座があり、晩冬から春にかけての南の地平線近くで南中していたことをご存じでしょう。あまり巨大な星座だったので4個の星座に分割されてしまいました。この星座の元になった船はギリシャ神話に由来し、紀元前9世紀頃の詩人ホメロス(ホーマー)によって残されたオデッセウスに登場します。この「アルゴ」という名前はギリシャ神話に出てくる「速い」と言う意味の巨大船の名前で、「速い」という名前の船の伝説は世界各地に伝えられています。日本でも、「日本書紀」の「国譲り」に際して「天鳥船(あまのとりぶね)」が登場し、さらに「諸手船(もろてね)」、「天はと船(あまのはとぶね)」、また「天の磐船(あまのいわふね)」などを見ることができます。

 これらは、いずれも「速い」船と言う意味で、750年の遣唐使の船は「速鳥(はやとり)」と名付けています。速い、と言う意味から名付けられたのは神話・伝説に登場する船に限らず、「Swift(スイフト):速い」と言う名の英国の軍艦、さらに自動車にまで見ることができます。


2015年5月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)
2015年5月の星空です
 5月になりました。宵の明星「金星」が、夕方西空高くで輝いています。ふたご座のカストルとポルックス、そして木星といった明るい星との離れ具合を観察すると、金星が少しずつ星空の中を移動している様子がわかります。頭の真上あたりには、北斗七星が見えています。北斗七星が見つかったら、春の大曲線、春の大三角とたどってみましょう。アルクトゥルス、スピカの2つの1等星がポイントです。


次回も、お楽しみに



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