鳥取市

天文セミナー第224回(2016年2月)「名付け親の楽しみ。」第8回 トルコ登録日:

天文セミナー 第224回 『名付け親の楽しみ。』

第8回 トルコ

No.11

(3391)?? Sinon=1977DD3     発見日:1977 Feb.18

 命名の由来:古代ギリシャの戦士、トロヤ戦争の英雄・シノンにちなみ命名。

 木星と殆ど同じ軌道を、太陽から見て前後に60度ほど離れて運動する小惑星の一群があります。これらの小惑星を称してトロヤ群の小惑星と呼びます。木星はジュピター、そしてゼウス、つまり王の中の王です。このギリシャに伝わるのがギリシャ神話。この神話は、紀元前800年ほどのころにホメロス(ホーマー)に依って書き残された詩イリアス、とオデッセイアによって知られました。この物語はギリシャと、対岸のトルコのトロイの間で繰り広げられたトロイ戦争が主題で、多くの神々、勇士が登場します。佐治のプラネタリウムでお馴染みですね。

 シノンは、シシュポスの息子でオデッセウスの異母兄弟とも言われます。一族は策謀に長けていて、それを受け継いだそうです。彼はオデッセウスの木馬の計画を実行するのに大きな力となりました。ギリシャ軍は木馬を作り、戦士達をその中に隠した後、戦船に乗り込み、トロヤを離れギリシャに向けて帰国の途についたように見せかけました。シノンは仲間から捨てられたようにトロイの海岸に残り、トロイ軍に捕らえられます。シノンは、この木馬はアテナの神の聖なる物だと言い、この木馬をトロイの人が城内に入れればトロイの守護神になるだろうと言いました。トロイの人達は、シノンの言葉を信じました。トロイ城に木馬と共に入ったシノンは、夜遅く木馬の腹にある扉を開き中に潜んでいたギリシャの戦士を外に出し、トロイ攻略に向かわせ、その結果トロイは滅亡したのでした。

 このトロイの戦に登場する紙や勇士を、木星の前後を運動する小惑星になぞらえて、これらの小惑星をトロヤ群の小惑星と呼びます。私が、この小惑星を発見した当時、トロヤ群に属する小惑星の数はあまり多くはありませんでした。そして、国際天文学連合(IAU)の小惑星中央局と、命名委員会とはトロヤ群の小惑星はこの機関で命名すると決めていたのです。この惑星が、トロヤ群に属すると判明したとき、私はどんな名前を付けてくるのかと思っていました。それでも、自分勝手にトロイ戦争に登場する勇士の名前を幾つか候補として委員会に提案していました。当時の委員長はB.G.マースデン。当然、この提案を見てくれたはずでしたが、命名されたのはSinon=シノン。これには一瞬戸惑いました。シノンは、あの木馬の奇計を実行に移し、トロイの人々を混乱の末敗戦に陥れたのですから。ちなみに、パソコンなどのソフトを破壊するウイルスで、最も注意が必要なのは「トロイの木馬」だと言う人もあるとか。

 ところで、このトロヤ群の小惑星が何故、木星の前後60度の場所で安定なのかという問題がありました。3体問題として考えると、その解は見つかりません。が、しかしこの問題はラグランジェに依って特殊解として解かれ、正三角形のそれぞれの頂点とさらに2点では安定に存在出来ることが判り、現在ではラグランジェのポイントと呼ばれています。そして現在の研究では木星の他、地球などにも木星のトロヤ群と同じような小天体が発見され、天体力学の発展や太陽系生成の謎解きに貢献しました。

2016年2月の星空

(ここをクリックすると大きな画像になります)

2016年2月の星空です

 2月になりました。冬の星座が最も楽しめる頃です。まずは南の空にある「オリオン座」を見つけましょう。オリオンの三ツ星と、二つの1等星「ベテルギウス」「リゲル」が目印です。オリオン座の左には、「冬の大三角」、右上には「アルデバラン」、さらにその上には「カペラ」、そして「カストル」「ポルックス」と明るい星のオンパレードです。一年の中でも明るい星をたくさん見ることができます。

次回も、お楽しみに

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