天の北国の物語も4回目となりました。今回は、北国ではないかも知れませんが山陰地方にまつわるお話。山陰地方の冬は、厚い雲に覆われ、日の目を見ることがほとんどないような日々が続きます。この山陰地方に、なぜだか多くの神話・伝説が残されています。
序章でも登場した、出雲風土記。この風土記が、私に「星の風土記」を書く切っ掛けとなったのです。この、山陰地方を代表するのが「出雲神話」。大国主神(オオクニヌシ)を主役とする神々の物語です。さらに、「古事記」や「日本書紀」。古事記が書かれて、早くも1300年が経過しました。そして、昨年2013年には伊勢神宮の20年毎の遷宮、さらに出雲大社の遷宮が60年目にして行われました。
よく考えると、この遷宮という行事には大きな意味があることに気づきます。先月までにも書きましたように、亀、蛇、蛙などは冬眠し脱皮します。また、兎は月の中に住み毎月甦りを繰り返します。これを、人々は甦りとも、あの世からの再生と考えました。新しい命の誕生です。この考えを、遷宮と言う行事に当てはめて考えることはできないでしょうか。いわゆる神といえども、年を経るとそれなりに衰えると考えることはできませんか?この衰えた神とその住まいである神殿を新しく造営する事によって、そこに住まう神も甦り新生、新たな命を得て来ると考えたのではないでしょうか。
古事記に記載されている、イザナギとイザナミの夫婦の神、日本で最初の夫婦でした。この夫婦神の内のイザナミが火の神を出産後の肥立ちが悪く黄泉の国へと旅だってしまします。このイザナミを慕って黄泉の国へ迎えに行ったイザナギ。あまりにも見難いイザナミを見てしまい、黄泉の国から逃げ帰って来たというお話があります。この記述から生まれたのが甦り、つまり黄泉の国から帰ってきたこと黄泉がえりだったのでしょう。
さらに、古事記の「因幡の素兎」イナバノシロウサギの記述は、月に住む兎を連想させます。世界各地に見られる月の兎の伝説。ここにも、月の満ち欠けと共に兎の甦りが考えられていて、満ち欠けを繰り返す月こそ甦り、再生、新生の代表格として考えられていたのではないでしょうか。そして、八十神(ヤソガミ)に伴われて山陰海岸を行くオオクニヌシが、ヤソガミの陰謀によって幾つもの災難に遭うことになりますが、この災難を救ったのが当時知られていただろうと考えられる天然の薬。因幡の海岸に自生していた蒲の穂であったり貝であったり。いずれもが天然の薬だったのです。この薬のお陰で、オオクニヌシは何時も蘇生、甦りを繰り返すのでした。出雲に限らず、オオクニヌシに関わる旧い神社が日本各地に祀られています。これらは、地の国、つまり地母神としてのオオクニヌシであると同時に甦り、再生の神でもあったのでした。
先にも述べましたように、オオクニヌシにまつわる神々を祀る神社の社紋のほとんどが亀甲紋。亀も当然ながら冬眠し、春になると地上に現れ蘇生したように見えるのです。
長寿と甦りの象徴として亀甲紋が使われていると考えるのは考えすぎでしょうか。
古代中国の星座にも亀または鼈(スッポン)を見ることができます(この星座は、現在のみなみのかんむり座)。亀は、背中が丸く盛り上がり、腹は平坦で安定して歩むことから、背は天、腹は大地を表すとして古代中国の宇宙観を象徴する生き物とされていました。玄武の項を参照して下さい。
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