天文セミナー 第160回
『佐治の夜空を見てみよう!』
「星の数ほど」、という例えがあります。また、同じように「浜の真砂の数ほど」とも言われます。この例えは、どちらも数え切れないほど多くのものがあると言うときに使われる例えでしょう。さて、今年は日本の人口を調べる「国勢調査」の年です。皆さんのお宅にも調査票が配られたことと思います。国勢調査は、国内の総ての人の総数を知ることとその動向を調べ、過去から将来への統計の資料とされるものです。調査員の方々のご苦労が偲ばれますね。ところで、この国勢調査を星の世界に応用するとどうでしょう。実際に星数えを行うことは至難のことですね。見る人の眼の感度によって数に違いが生じます。最初にこの人口調査とも言うべき研究にトライしたのは、ウイリアム・ハーシェルでした。夜空を幾つかの区域に分割し、その中に含まれる星を徹底的に数えたのでした。同じ望遠鏡で同じ人が観測することによって、誤差を少なくすることができるわけですね。こうして、天の川と、天の川から遠く離れた場所での星の数の相違から我われの銀河系の姿を推定したのでした。夜空を区切っての星数えは、現在も多くの統計に使われている手法と同じで、サンプリングによる統計ですね。よく知られているのが、各政党の支持率の調査です。これなども、コンピュータによりランダムに抽出した電話による質問と聞き取りによる返答が基本になっていて、対象の電話の数はあまり多くありませんね。私など、こんなに少ない応答者の数から得られた数値がどれほど信頼に堪えるのかと疑問にさえ思うことがあります。それはさておき、これと全く同じ手法で星の数が推定されます。もっとも、明るい星は実際に数えることが可能なので実際に数えますが、暗い星の数は統計的手法によって算出します。ところが、観測機器の開発が進むと意外なことが発生します。国勢調査など、具体的に数を数えることができる対象では決して考えられないような事実です。例えば、まだ発見されていないような微生物の種類やウイルス、実際にカウントできるといっても先ず不可能なのが光の粒子、光子と呼ばれていますがこれなどの数は統計でも推定できませんね、また実際に計数も不可能です。これと同じようなことが星の数の計数にも起きるのです。 |
2010年10月の星空 (ここをクリックすると大きな画像になります) |
次 回も、お楽しみに |