天文セミナー 第91回
『本初子午線』『世界で最も早い初日の出』
西に向かって海外旅行をしたとき、出発した時の時刻より早い時刻に到着するというふしぎな体験をした人も多いと思います。例えば、イギリスに行くとき日本を出発した時刻と殆ど同じ時刻にイギリスに到着してしまいます。実際には、およそ12時間の飛行時間があるにも関わらず出発時刻と到着時刻が殆ど同じです。これは、世界各国が取り決めをして、自分たちに最も使いやすい時刻制度を採用しているからです。例えば、日本は東経135度の線を基準にしているのに対して、イギリスは経度0度を基準にしています。1884年(明治17年)、アメリカのワシントンで開かれた国際会議で、イギリスのグリニッジ天文台にあるエアリ子午環という望遠鏡の中心を通る子午線を世界共通の軽度の原点にすることが決まったのです。これ以来、このグリニッジ天文台の子午環の中心線が本初子午線と決められ、経度15度を単位として1時間毎の時差を設けるようになりました。
世界を股にして飛び歩くような人、例えば飛行機の乗務員などは、現地時刻と共に世界共通の時刻として使われているグリニッジ標準時刻が判るような時計を使用しているそうです。本初子午線の決定に大きな貢献をしたエアリ子午環は1953年にその役目を終わり、その中心点に標識が埋め込まれ、さらにその南北に経度0度を示す白線が引かれています。私が、このグリニッジ天文台を訪れたとき、この白線を跨いで東西の半球に足を乗せたと喜んでいる観光客を何人も目撃し、そして私も例外ではありませんでた。 |
さて、本初子午線を基準に、東西180度の経度が設定されると、再び問題が発生しました。それは日付に関するものでした。どこを基準に日付を変えるかという切実な問題です。グリニッジ天文台を経度0度とし東西に180度を測ると、幸いにも太平洋のほぼ真ん中で東西の経度は180度になります。そして、殆ど人の住んでいないような場所でもありました。そのような場所、つまり島を避けるように設けられたのが、万国日付変更線でした。この日付変更線を西から東に通過すると同じ日を繰り返すことになり、東から西に通過すると1日飛び越すことになるのです。地球が、24時間で西から東へ自転で一回転するからで、太陽に大きく関わっていることを改めて知ることになるのです。
もう大分前のことですが、日付変更線を通過した船や飛行機の乗客には、日付変更線通過証明書が船長や機長から渡されたものでした。私も1枚貰ったことがありますが、さてどこへ行ったことやら、仕舞い忘れてしまいました。 |
次回も、お楽しみに |