天文セミナー 第66回
『日有蝕尽之(日ハエ尽タリ)』『南極観測(IGY)』
「日ハエ尽タリ」。日本書紀の、推古天皇34年3月の項に見られる日本で最初の日食の記事です。そして、この記事の5日後に天皇は薨去、舒明天皇へと皇位が引き継がれることになるのです。なんとなく、不吉な予言を感じるのは私だけではないでしょう。
ところで、今月4日、南アフリカで始まりインド洋を東に進みオーストラリア南部の南氷洋沿岸で終わる皆既日食があります。理科年表によると、この日食の時の太陽と月の視半径の差は僅かに8秒角。南オーストラリアの南氷洋の沿岸で見られる皆既の時間はおよそ30秒にしかなりません。 |
今年も、南極観測のため隊員を乗せ砕氷艦「しらせ」が出かけました。1957年に始まったこの南極観測も随分と歴史を重ねたものですね。発足当時の苦労は、多くの物語や映像で語り継がれてきました。最も感動的だったのは「太郎、次郎物語」でしょう。観測の重要な役割を分担した犬の物語でした。 さて、上にも書きましたように4日の日没前には南オーストラリアの沿岸で、30秒間ほどの皆既日食が見られるのです。南氷洋に沈み行く皆既中の太陽。周縁に見られるコロナとプロミネンスが、南氷洋の海面に映えるでしょう。こうなると天空と海面との鏡像。上下2箇所の皆既日食。感動的な天体現象になるかもしれませんね。 |
2002年12月の星空 |
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次回も、お楽しみに |