とっとり市報 HTML版
2020.8 No.1120

人権尊重都市鳥取市の実現をめざして〜ハンセン病問題を知っていますか?〜Vol.433

  • 本庁舎人権推進課
  • 0857-30-8071
  • 0857-20-3945

ハンセン病とは、「らい菌」に感染することで起こる病気です。感染し発病すると、手足などの末梢神経が麻ひし、温度や痛みを感じにくくなり、体の一部が変形するといった外観上の変化が起こったりします。

現在の日本では、感染することも発病することもまれです。また、治療薬が開発され、早期に発見し適切な治療を行えば、確実に治癒する病気です。

患者の隔離(かくり)政策

ハンセン病患者は、その外観の特徴などから、偏見や差別の対象とされることがありました。

昭和6(1931)年に「(らい)予防法」が制定され、患者は療養所に強制的に収容されました。また各県では、患者を見つけ出し療養所に送り込む「無癩県(むらいけん)運動」が行われました。保健所の職員が患者の自宅を徹底的に消毒し、療養所に強制的に患者を送り込むという光景は、人々へハンセン病は恐ろしいものというイメージを植え付け、偏見や差別が一層助長されていきました。昭和18(1943)年に米国で特効薬「プロミン」が開発され、治療法が確立されたあとも、日本では患者の隔離政策が継続され、「らい予防法※」が廃止される平成8(1996)年まで行われました。

※昭和28(1953)年「癩予防法」を「らい予防法」へ改正。

らい予防法廃止後の動き

平成10(1998)年には、入所者らによって熊本地裁に国のハンセン病政策の転換が遅れたことなどの責任を問う「らい予防法違憲国家賠償請求訴訟」が提起されました。平成13(2001)年に原告勝訴の判決が下され、国は責任を認め、平成21(2009)年には、元患者などの福祉の推進、名誉の回復などのための措置について定めた「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」を施行しました。

隔離政策により、患者だけでなくその家族も偏見や差別の対象とされたとして、平成28(2016)年熊本地裁に対し、元患者の家族が損害賠償を求める裁判を起こしました。令和元(2019)年6月に原告勝訴の判決が下され、同年11月に「ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律」が公布・施行となり、元患者の家族へ国から補償金が支給されることになりました。

同じ過ちを繰り返さないため

国が責任を認めたあとも、熊本県のホテルがハンセン病療養所入所者の宿泊を拒否した事件が起きるなど、元患者の人や家族に対する偏見・差別には根強いものがあります。入所者の中には療養所の外で暮らすことに不安を感じて、安心して退所できない人もいます。また入所の際、家族に差別や迷惑がおよぶことのないように偽名を名乗るしかなく、現在も本名を名乗れなかったり、故郷に帰れず肉親と再会できない人もいます。

今も残る偏見・差別をなくすためにも、まずはこの問題について〝正しく知る〟ことが大切です。

現在、新型コロナウイルス感染症に関する誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)などの差別が全国的に起こっています。単純に比較できないもののハンセン病の歴史は、誤った知識や見解から偏見を生み、差別につながることを教えてくれています。同じ過ちを繰り返さないよう、一人ひとりが考えてみませんか。

「ハンセン病強制隔離への反省と誓いの碑」

鳥取県の無癩県運動への反省・考える拠点として、とりぎん文化会館前に建立されました。