【特集】
山村の渋ビル プラザ佐治が熱い!

 

平日は、建物内の見学が可能です。詳しくはお問い合わせください。
問い合わせ先|佐治町総合支所地域振興課  
0858-71-1912  0858-89-1552


プラザ佐治 全景
 

 
 佐治町には、山村の発展のために建てられた豪雪山村開発総合センター「プラザ佐治(愛称)」があります。建設当時の時代性を感じられる趣のある「渋ビル(渋いビル)」として、その価値が再注目されています。
 

人が集まる広場を造る

 プラザ佐治は、国の過疎対策の一環として、全国10カ所に建てられた「豪雪山村開発総合センター」の一つです。
 プラザ佐治が建設された当時、佐治村では、住民の多くが便利な生活を求めて村を出ていき、過疎化が進んでいました。そんな状況の中、当時の上田禮之(うえた ひろし)佐治村長は、産業の振興や住民の生活を向上させるため、さまざまな用途で利用され住民に親しまれる施設を建設し、過疎化に歯止めをかけようと取り組みました。
 建設は、地元住民の反対意見や建設の計画が進む中での建設予定地の変更など、さまざまな困難に直面しながら進められましたが、昭和46年3月、佐治村豪雪山村開発総合センターが完成しました。
 建物の愛称は、村民の応募の中から「人が集まる広場」という意味の「プラザ佐治」と名付けられました。
 

プラザ佐治 俊工式

周囲にはまだ雪が残る中、昭和46年3月、完成の式典が盛大に行われました。

プラザ佐治 外観
センター棟と役場棟

センター棟と役場棟
 それぞれの建物が「く」の字に向かい合っています。建物は横から見た時に台形型をしているほか、雪が降っても歩けるよう、アーケードが設けられています。

外壁の模様

外壁の模様
 外壁のギザギザ模様もプラザ佐治の特徴の一つです。周囲の山並みとの一体感が感じられるデザインです。

黎明(れいめい)の庭

黎明(れいめい)の庭
 平成4年の村政施行80年を記念して作られた庭です。地元の文化資源である佐治川石を配置しています。黎明とは「夜明け」の意味で、これからも続く佐治の繁栄を表しています。

旧婦人児童室アクリルパネル

カラフルなアクリルパネル(旧婦人児童室)
 センター棟の部屋の窓にあるアクリルパネルは、「子どもたちに都会的な楽しい空間を提供したい」という思いが感じられます。

建物の特徴

 プラザ佐治の設計は、島根県出身の建築家・安田臣(やすだ かたし)さんが手がけました。施設は、センター棟と役場棟の2つの建物からなり、それぞれが「く」の字で向かい合っています。これは、限られた土地を最大限生かすための工夫です。現在も当時の姿をそのまま残しています。
 センター棟には、結婚式場(大会議室)や食堂、図書室などが備わり、住民の研修や集会、結婚式などに使われていました。さらに、宿泊・入浴設備もあり、住民の交流拠点や寄宿舎などの用途で住民に親しまれていました。
 役場棟は、令和元年に耐震改修され、現在も佐治町総合支所として利用されています。
 

建築家や専門家からの注目集まる

 本市出身の建築家・謡口志保(うたぐち しほ)さんは、建築家の仕事のかたわら、長い年月その地域で活躍した古い建物の素晴らしさを「渋ビル」として発信する活動をしています。 
 昨年3月、謡口さんの活動に賛同した地元有志およそ10人が「プラザ佐治の景観を活かす会」を結成しました。会では、プラザ佐治の魅力や価値を掘り起こす活動に取り組み、行政とも連携し、プラザ佐治を知ってもらうためのイベントなどを開催しています。
 今年7月には、プラザ佐治を設計した安田臣さんについて語るシンポジウムが開かれ、多くの参加者でにぎわいました。シンポジウムの模様は、「まちかどだより」で紹介しています。
 このように、完成から半世紀以上が経過したプラザ佐治は、その優れたデザイン性から、建築家や専門家の注目を集め、「日本におけるモダン・ムーブメントの建築280選」に選定されました。

プラザ佐治ができるまで

プラザ佐治の景観を活かす会と佐治町総合支所が連携して企画・制作した冊子

※クリックで拡大します

建築家や専門家のみなさんに聞きました
プラザ佐治の魅力はなんですか? 

謡口 志保さん

ウタグチシホ建築アトリエ
名古屋渋ビル研究会
謡口 志保さん

竣工から50年以上経過し、建物の表情からその間に刻みこまれた佐治の風土を感じ取ることができます。また、設計者の安田さんは、建物がその場所で愛されることを目指して設計に取り組んだ建築家だったそうです。いち建築家として学ぶことが多いです。

赤山 渉さん

鳥取県建築士会東部支部
支部長 赤山 渉(あかやま わたる)さん

「神殿」「要塞」と表現する人もいるように、その力強い造形が魅力のひとつです。2棟の建物の中心にある広場は、強固な守りの内に柔らかさや温もりを感じさせます。また、敷地や環境条件などにより導き出された、地域性の高い建築でもあります。

日本におけるモダン・ムーブメントの建築280選に選定
プレート

贈呈された選定プレート

 プラザ佐治が、DOCOMOMO(ドコモモ) Japanによる2022年度「日本におけるモダン・ムーブメントの建築280選」に選定されました。住民が自然に集まる広場を備えた設計や建物の高いデザイン性などが評価されました。
※DOCOMOMO Japanは、オランダに本部がある建築の国際学術組織の日本支部です。日本におけるモダンムーブメント(近代運動)の推進に寄与した建築について、その保存と記録に関する活動を推進しています。