ボアッティーニ彗星 P/2010 U1の検出(今回帰世界初観測)に成功登録日:
2025年8月12日、天文電報中央局から発行された『CBET 5590』によると、鳥取市さじアストロパークで2025年7月25日に観測した彗星が、ボアッティーニ彗星 P/2010 U1 (Boattini) の今回帰世界初観測であると報じられました。
この彗星は2010年に発見され、周期16年半で太陽のまわりを周っています。2011年12月を最後に観測が難しい状態(太陽からの距離が遠くなったことで彗星活動が弱まり、暗くなって地球から観測できなくなった)となっていました。
2026年9月に再び太陽に近づき観測できるようになると軌道計算から予想されていましたが、2025年7月25日、さじアストロパークの103cm望遠鏡での観測で、この彗星の再び戻ってきている様子を確認し、これが世界初観測(「検出」と呼びます)であることが認定されたものです。
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上の画像は、2025年7月25日1時55分に、鳥取市さじアストロパークにある103cm反射望遠鏡に天体専用デジタルカメラを付けて撮影したものです。明るさは21.7等で、左上の矢印の天体です。
今回の検出により、この彗星には「510P」という周期彗星番号が付されました。
彗星は主に氷でできた天体で、太陽に近づくと融けて明るく光って見えるようになります。多くの彗星は、長い楕円軌道で太陽のまわりをまわっています(周期彗星と呼ばれます)。周期彗星が新しく発見されると、太陽に近い間だけ観測されますが、太陽から遠く離れると暗くなり、観測できなくなります。そして再び太陽に近づくと観測できるようになりますが、これまでの観測期間が短いため、計算から予想される位置の精度悪く、場合によっては再観測されることなく、行方不明となる場合もあります(また、太陽に近づいても彗星活動がにぶく、観察されない場合もあります)。そのため、新発見された彗星が次に太陽付近へ戻ってきた時に最初に観測することを特別に「検出」と呼び区別しています。検出されることで、軌道がより正確に計算できるようになり、以降、行方不明になる可能性が小さくなるのです。
鳥取市さじアストロパークでは、これまでの以下の5つの彗星の検出に成功しています。今回は6例目の検出となりました。
彗星名 | 検出日(UT) | 光度 | 掲載IAUC | 検出者 |
串田・村松彗星(147P) | 2000.10.03 | 20.2 等 | IAUC 7507 | 織部隆明 |
ミュラー彗星(149P) | 2000.12.22 | 20.5 等 | IAUC 7577 | 織部隆明 |
ヘリン・ローレンス彗星(152P) | 2001.12.24 | 19.5 等 | IAUC 7790 | 織部隆明 |
シューメーカー彗星(155P) | 2002.09.09 | 18.0 等 | IAUC 7969 | 織部隆明 |
パンスターズ彗星(477P) | 2023.11.15 | 20.7 等 | CBET 5336 | 織部隆明 |
今回の観測では、天文電報中央局の中野主一さんに、いろいろとご助言をいただきました。この場を借りて、お礼申し上げます。
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