とっとり市報 HTML版
2021.10 No.1134
鹿野町河内

実る果実 集う~耕作放棄地からにぎわいを生む果樹の里山へ~

農業を営む人の高齢化や後継者不足による「耕作放棄地」が全国で増加しています。そんな耕作放棄地を地元住民や学生らが協力し、地域内外の人が集まる場所へと生まれ変わらせた、鹿野町河こうち内集落の「果樹の里山」を取材しました。

地域を守りたいという思いから

鹿野町河内に、およそ850本の果樹が植えられた4ヘクタールの広さの果樹園があります。この場所は以前、耕作放棄地になることが懸念された場所でした。

全国的に増加している耕作放棄地は本市でも課題となっており、河内集落の住民も、増えていく耕作放棄地に危機感を感じていました。そんな状況の中、平成26年に地域住民と行政、NPO法人「いんしゅう鹿野まちづくり協議会」は、農地が荒廃し、豊かな農村風景が失われることを何とか食い止めようと立ち上がり、耕作放棄地を果樹園に生まれ変わらせようと話し合いました。

話し合いを進める中で、耕作放棄地を果樹園へ転換するだけにとどまらず、「地域全体を体験農園に」「果樹を使った商品開発」「空き家活用による滞在交流施設の整備」など、地域一帯ににぎわいを創出していくための取り組みを計画し、5年間の「果樹の里山計画」としてまとめました。

地域や学生と協力して進めてきた5年間

果樹の里山計画は、地域住民や行政、大学生などがメンバーとなり結成された「果樹の里山協議会」を中心に活動が始まりました。当初は住民の中でも「実現は無理だ」という声もありましたが、協議会のメンバーが「農地を守りたい」という思いを伝え活動を行ううちに地元住民への理解も深まり、農地の無償貸与を了承してくれたといいます。また心配された資金面も、国の補助金の採択を受けたことで解決することができました。

計画の1年目は、耕作放棄地の除草や(うね)作り、農道の舗装などを行いました。除草作業を開始したのは夏の時期で、協議会のメンバーらが炎天下でも連日作業を行いました。週末や長期休暇には、取り組みに共感した学生や地域の人も加わりました。

畝作りが終わった1年目の秋に、イチジクや栗、柿などの果樹の苗およそ230本を植えました。この苗植えにも、大学生や子どもたちなど、多くの人の協力があったといいます。翌年以降も、ときにはイベントのような形で除草や苗植えを行い、現在では12品種が育っています。

たくさんの人が訪れる場所へ

現在果樹園では、毎年多くの果実が実るようになり、地元の直売所で販売したり、加工品を市内や大阪の店舗で販売しています。

令和2年には、果樹園付近にあった旧公共施設を自分たちでリノベーションし、果樹の里山の拠点施設「里山ベース」が完成。果樹園で採れたものを加工する調理場や、イベントに活用できるスペース、ピザ窯も作り、たくさんの人が集い、果樹の里山を楽しむことができる施設となりました。

また、協議会が初めて主催したイベント「果樹の里山まつり」では、地域内外から訪れた参加者が果物狩りや直売市など、果樹の里山の魅力を満喫しました。

河内集落は耕作放棄地だった場所から「地元を守りたい、元気にしたい」という思いにより、地域内外の人とつながる場所に姿を変えました。今後も果樹の里山の活力あふれる取り組みに注目です。

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長い間人の手が入らず雑草が生い茂ったエリアもあった耕作放棄地を、多くの人の手で除草し果樹が植えられるよう整備しました。
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果樹園の中で最初に実をつけたイチジクを使って、ジャムやドライフルーツなどの加工品の販売を開始。
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たくさんの人が集うことを願い、協議会メンバーや大学生たちが手作業でリノベーションして完成した拠点施設「里山ベース」。

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